ハウス・オブ・グッチ
監督:リドリー・スコットさん
出演:レディ・ガガさん、他
富と名声という呪いからは逃れられない
リドリー・スコットの新作、「ハウス・オブ・グッチ」を観ました。予告からして間違いなくおもしろそうでしたが、まぁこれがすげぇおもしろかったです。
観た後の感触としてスコセッシの一連の映画や、数年前にあった「アイ、トーニャ」とかをすごい感じはするんですが、でもかなりしっかりリドリー・スコットの映画だったというか、全体に通底するリドリー・スコットの乾いた意地悪な笑いが透けて見えるような映画で。大変堪能しました。思ったよりもリドリー・スコット味がすごい。彼の作品だと個人的には「悪の法則」とかに近いんじゃないかなと思ったり。とにかく意地悪い感じが最高。もっとダークコメディ味に寄せてもおもしろかったかなと思いつつも、このクールで乾いたリドリー・スコットっぽい味わいもこれはこれで良しという感じ。
この映画のおもしろいなぁと思ったところは2人が出会ってからどういう道をたどればこうならなかったのか、まじわかんないところだったりします。どういう道をたどってもこうなった気がする。ほんと「悪の法則」じゃないけども、どうしたってグッチという富と名声の象徴みたいな巨大な中心からは逃れられず、吸い込まれてしまうような。そしてそれを俯瞰から見てニヤッとしてるリドリー・スコットという図に痺れました。
俳優陣はすこぶる良くて目が離せません。個人的に1番良かったのはアル・パチーノ。なんだあの胡散臭さとキュートさは。後年のアル・パチーノの中でも屈指のキャラクターだと思いました。
全体的に画面と構図、そして美術とファッションの構築が素晴らしくて見惚れるほど。そこになんか間の抜けた音楽の皮肉さも重なり唯一無二なバランスの作品になっていたと思いました。良い意地悪な映画を見たなと。突き放してる分構造が似てる「アイ、トーニャー」とかにあった悲哀や感情移入の隙みたいなものがなく、全てがクールで淡々と渦に飲み込まれるみたいな感じが本作の好きなところでした。すごい見応えの一本でした!