Arc アーク/石川監督のホラーが観たい | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。

 

 

 

Arc アーク


 石川監督のホラーが観たい

監督: 石川慶さん

出演: 芳根京子さん、寺島しのぶさん、他

 

 

 

ここ数年で異常なほど信頼度が増している石川監督の最新作ということで「Arc アーク」を観てきました。「愚行録」、そしてなんといっても前作の「蜜蜂と遠雷」が好きすぎるので、かなり期待度を上げての鑑賞。原作は未読。それなりに楽しんだけど、過去2作ほどではないかなぁ…という感じでした。

 

 

 

ともかくぴきっとした撮影とライティングが「ああ~石川監督作だなぁ~」という感じで。その石川監督らしい撮影演出と設定もろもろとがハマってた前半部分はおもしろかったです。というか、前半の話の軸となる「プラスティネーション」っていうモノそのものと、それが行われる謎の近代美術館みたいな施設でのあれやこれやがおもしろいし、禍々しくもどこか美して魅力的なパートで。正直、中盤以降の不老不死うんぬんよりも前半のプラスティネーション部分のほうが断然おもしろかった…というのが正直なところでした。しかも前述したように石川監督ならではのあのぴきっとした撮影と死体との相性がいい。この設定のままホラー映画に突入してほしいなぁと思うくらいの魅力があったので、次作は石川監督のホラー映画が観たい



寺島しのぶはちゃんと気持ちが悪く、あの死体を固める謎の儀式なんかもどこかそれっぽいケレンがあっていい。施設も医療施設というよりは工房っぽい美術がなされてて、そこがなんかリアルでした。あと前半部で何よりよかったのは「プラスティネーション」を受けたいというお客さんたち!あのちょっとドキュメンタリックな演出がなされてる聞き取り部分。確かに大切な人が死んでるので、死体を残したいという切実な思いはわかるけど、と同時にちゃんとなんか気持ち悪い、という感じがまじうまかったです。こういうのをずっと観たかったのですが…。

 



そんでもって人類が不老不死を手に入れてからの世界がモノクロで描かれる後半。前半がすごい気持ち悪くも美しく、という感じで魅力的だった分、個人的に後半はちょっと退屈だったなぁ…という感じでした。あえてだと思うんですが、かなり静的な話になってるし、あと正直割と想像通りの生と死の話みたいなものに落ち着いていくので、やや物足りず。クライマックスの不老不死ゆえの生と死の問答も、漫画とかアニメで100回くらい読んだ気がする内容で新鮮味ゼロだし、おもしろくもない着地。なんならこのテーマ事態は「さよならの朝に約束の花をかざろう」とかの方がかなりの高水準で成功させているような気も…。

 

 

 

原作がどうかは知りませんが、個人的にはもっと死というものがなくなると世界の人々は社会はどう変わったのか、という思考実験的な方に全振りした話が観たかったかなぁ…という感じで。前半が面白かった分、なんか全体通すと普通の話だったなぁ…と感じた、そんな「Arc」でした。石川監督作、次作に期待!