本気のしるし 劇場版
「無難と曖昧を繰り返してきた報いよ」
監督:深田晃司さん
出演:森崎ウィンさん、土村芳さん、他
「本気のしるし 劇場版」4時間観てきました。深田晃司監督作。個人的に下半期はクソ忙しくなってきたので、超頑張って時間を作って行ったんですが、ほんとに行って良かったー!
今年ベスト級の素晴らしい映画でした。邦画ではダントツの1位。圧倒されました。大好きな映画です。
いや〜ともかくめちゃくちゃおもしろくて、画面の全てがスリリング。脚本の見事なおもしろさとスピード感、美しい円環。土村芳の得体の知れない危うさと不気味さ…。恋愛映画としてもノワールとしてもともかくすきな映画に求めるものが全部入ってました。
ロングショットや長まわし、何気ない生活描写の不穏さなど、とにかく画面がことごとく素晴らしいんですよね。だから4時間も観れるんですよ。とにかくどのショットも飽きさせず、恐ろしくスリリングな場面ばかり。惚れ惚れしながら見てました。
あとはなんと言っても土村芳さんの浮世がとにかく魅力的。ここ数年でも最高の女性キャラクターだなと個人的には思います。登場からともかく危うく不穏で不気味で儚げ。ファムファタール的な立ち位置ではあるが、確信犯的なものではないというこの難しい役をよく演じ切ったなと思います。彼女の存在そのものが映画全体を引っ張るというすごい女優さんだと思いましたね。そしてそのファムファタールもののこれまでの概念を批評的にひっくり返すのもうまい。というかそれこそがテーマだったように思います。ファムファタールものをひっくり返した映画、新たなノワールとして、忘れがたい作品になりました。
先輩の彼女のセリフ「無難と曖昧を繰り返してきた報いよ」というセリフがめちゃくちゃ個人的に刺さりました。ほんとにその通りだな。森崎ウィンさんはほんとに何度か自分のことかな?と思うシーンがいくつもあって、いろんな意味でキツかったな。うん。
4時間もあるけど、全体として計算され尽くされた構成ですよね。ただ中身は、計算できない人間の感情みたいなものが剥き出しになった映画で。映画の手触りはまったく逆だけど、後味としては園監督の「愛のむきだし」をちょっと思い出したりしたなぁ。あとシーン単位でもかなり影響を受けてそうな(特に海辺のシーン)、石井隆の「ヌードの夜」を感じたりしました。ヌードの夜とか、石井隆が作ってきた世界のその先みたいな。そんな味がしました。
ともかくめちゃくちゃおもしろかったなぁ。好きな映画ってこういう映画だなぁが詰まった「本気のしるし 劇場版」でした。