TENET テネット/チャーミングとロマンティック | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。



TENET テネット


チャーミングとロマンティック
監督:クリストファー・ノーランさん
出演:ジョン・デビッド・ワシントンさん、ロバート・パティンソンさん、他



クリストファー・ノーラン監督新作「TENET テネット」を観てきました。珍しく2回観ちゃった。正直言うとこれまでノーラン作品はバシッとハマる作品がなくどの作品も好きでも嫌いでもないという微妙な立ち位置で、なんとなくな気持ちで全作品を観ておりましたが、まさかここにきて明確に「好き」なノーラン作品が来るとは!

というわけで「TENET テネット」、ノーラン作品でダントツで好きですし、ここまでノーランの作品で興奮したのは間違いなく初めてなのでそういう意味でもなんかうれしい気持ちです。



2回目をIMAXで観て確信したんですが、やっぱ私見れば見るほどこの映画めちゃくちゃ好きなんですよね〜。これまでちょっと苦手だったノーランの頭でっかちさを己のチャーミングさとロマンティックさがはからずも超えてくる感じほんと好きでね。

ノーラン作品は基本ノーランが思いついた設定やりたかった設定を可視化する作業だと思ってるんだけど、今回はそれを映画として可視化する執念がこれまでで1番狂い散らかしててそこがめちゃくちゃ好きなんです。話も設定ありきで自分でわざわざややこしくした挙句、結果的に出来上がったものがめちゃくちゃ娯楽で、かつ物凄いピュアでエモでロマンティックになっちゃったというのがすげぇキュートで最高。これまでのノーラン作品でいちばんキュートな映画だと思います。


ともかくニールが最高です。ニール=キャットの息子説が世界的に定説になってきてますが、そう考えるとものすごいエモい話ですよね。真っ先に想像したのは魔法少女まどかマギカのほむらちゃんでした。実は全部知ってたニール、2回目を見るとここにますますグッときちゃうというのも私好み。
あと、「無知こそが武器である」っていうキーワードが最初から最後まで貫かれてた映画で個人的にはここが特によかった。主人公は何も知らない状態から全てを知った状態になり、一方ロバート・パティンソンは、全てを知ってる状態から、あのラストへ。行き先とゴールが真逆な2人が見た目では同じ目的と方向に進んでいくおもしろさと、無知であったからこそ遂行できたお話という切なさがあり。。人間、「知らない」という状態には戻れない生き物だということを改めて思いました。知らない状態というのは本当に貴重な状態なんですよね。
あと単純に未来と過去から敵を挟み込むというのを可視化したアクション炸裂のこれまで見たことないもの見せてくれるクライマックスは絵的に大興奮でした。この期に及んでまだ見たことないものを見せてくれるって最高ですよね。
そして冷静に考えてこんな話をオリジナル企画で最初から最後まで自分でプロデュースしてコロナだからこそと公開に踏み切り、そしてヒットさせるって、もう今これができるのはノーランだけだよなと思うんでね。なんかこれまでまったく感じなかったノーランのありがたさをヒシヒシと感じたこの2020年でした。
敵の目的が最近の映画では珍しくものすごく説得力があってすごく良かったとか、007のゴールドフィンガー感とかサンダーボール作戦感とか最高とか、いろいろ最高でしたね。
ただ明らかに設定が破綻してるところとか色々あるんだけど、いちばん気になったのは逆行した世界では物が燃えると凍るという設定で(笑)あれはいらなかったのでは…。じゃあなぜ逆行した車が運転できてるんだ!エンジンかけた時点で車凍るだろ!というのはいちばん気になりましたが…
その辺も含めキュートでいいじゃない!

とにかく全部キュートなんだよ!ノーランはなんか頭でっかちな映画という見方をこれまでしてましたが、このテネットを見て全作品を振り返ると、なんだかんだで実はものすごいキュートでピュアな作家だったのかもなと、これまでの感想を振り返って改めたくもなる、それくらいノーラン作品の中ではダントツで響いた映画でした。めちゃくちゃおもしろかった!