海辺の映画館 キネマの玉手箱
大林宣彦監督、遺作
監督:大林宣彦さん
出演:常盤貴子さん、山崎紘菜さん、成海璃子さん、他
大林宣彦監督、新作にして遺作「海辺の映画館」少し遅れてこちらにもやってきたので、やっと観ました。いやぁ、すごかった!!
亡くなる半年くらい前に私、大林宣彦監督のトークショーを観に行ったんですよね。去年の9月、山口県のYCAMで行われたトークショーでした。YCAMの目と鼻の先に中原中也記念館があり、たしか前日に中原中也関連の集会があったのかな?で、そのタイミングで「この空の花」とか「野のなななのか」とかの上映をやってましてね。癌がかなり進行されてるというのは聞いてましたので、たぶん監督のトークショーはこれが最後になるかもしれないな…と思い行ったんだけどほんとに行ってよかったし、そのトークショーはほとんどが「海辺の映画館」の話でした。中原中也の詩とともに物語が進んでいく本作ですが、そこに出てくる詩に対する監督の考えや、中原中也への思い、そしてなんと最後には奥様の大林恭子プロデューサーや「海辺の映画館」に出てくる新人 吉田玲さんまで登場。ほー!この子が監督が惚れ込んだ新人さんで、さらに「海辺の映画館」という新作に出るのかぁーどんな映画になるのかなぁとほんとうに楽しみにしていました。
↓その時の写真。
こんな遺作があるの?というくらい、大林宣彦の全てがここにある。とでも言うような大林宣彦全部盛りの1本。とにかくパワフルでエキサイティングでアバンギャルド、だけど語り口は優しい。
映画がはじまり、いきなり監督のお友達である外国人タップダンサーの無事を祈る的な超個人的なメッセージみたいなのがものすごいテンションととんでもない多幸感で出てきて、いきなり食らいました(笑)だれ?っていう。なんかもう本編前の時点で首根っこ掴まれてスクリーンにぶち込まれるような勢いであります。
お話は、戦争映画のオールナイト上映が行われる閉館間近の映画館で、映画を観ている観客たちが映画の中に入っていくと。で、映画の中で出会った人々、歴史の重要な場面、また犠牲になった女性たちと出会いながら、戦争を学ぶ、というざっくりとしたお話。ここ三作は確かに強烈なものばかりでしたが、それと比べると構造自体はかなり見やすいのではないかな?
ともかく吉田玲さんをはじめ、女優陣への撮影は見事そのもので、常盤貴子、成海璃子、山崎紘菜、この3人は特にほんとにすごいよなぁー!大林宣彦的世界観とこの3人のそれぞれの演じ分けや何と言っても顔そのものが、ものすごく大林宣彦的で、成海璃子さんとか初顔合わせとは思えないくらいでしたよね。
脇もほんとに超豪華で、大林宣彦組大集合の様相。これを過剰な色彩と音楽、歪な撮影と合成、パワフルで強引な語りで、力強く戦争についての話をしていく大林宣彦監督。観終わった後まず思い浮かんだのが「ハウス」だったのが興味深かったな。ともかくとてつもない情報量ですが、一言で言うと「大林宣彦作品」である、という言葉がまずくる。そしてこれが遺作であるという事実。まぁとんでもない唯一無二性を携えた凄まじい1本でした。
観れてよかったです。圧倒されました。