透明人間/一瞬も安心させない | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。



透明人間


一瞬も安心させない
監督:リー・ワネルさん
出演:エリザベス・モスさん、他



「透明人間」を観てきました。今、「透明人間」をやるってどんな感じになるんだろう…と思っておりましたが、めちゃくちゃおもしろかったです。今年ベスト級の1本になりました!いや〜おもしろかった!


巧みな撮影と演出で、なんにもない何気ない画なのに、なんかわかんないけど何かがいる気がする…という画面作りがめちゃくちゃうまくて、観てる間ずーっと緊張感がキレない。観客を、そして主人公を一瞬も安心させないぞという作り手の固い意思をヒシヒシと感じました。

何も語らずして多くを語ってくれるオープニングがまず素晴らしかったですね。直接的なDVシーンとか回想、セリフを使わずに、明らかにこの夫はやばいやつに違いないということがわかる、主人公脱出シークエンス。ここの緊張感の作り込みを見てもうこの映画は傑作に違いないと確信を得ましたね。

そこからどうやら何もいないようでなんかいる気がする…という中盤あたりはもうほんとにずーっとキリキリキリキリと胃が痛い緊張感に包まれまくり。透明になった人間からの目線の映画はこれまであったけど、なかなか透明人間に襲われる側の人間の映画ってなかったから新鮮でしたね。透明の人間に襲われるって超怖いんだってことが改めてわかります。しかも、今回は透明になってるのがDVでストーカーの元夫という超やばいやつってのがさらに怖さを増してて。

で、偉いのが、こっちが想定していた事態の常に上を行く展開だらけってところなんですよね。えっ!?えーっ!?みたいな展開をどんどんどんどんしていく、まぁとにかくおもしろいわけです。


あとやっぱり主人公をDV被害者の女性にしたのがすごいところですよね。透明人間という超古典的な題材とこの設定が、ものすごくフレッシュに混ざり合ってて、この設定をよくぞ思いついたなと。なにかおかしい!誰かいる!と言っても誰も取り合ってくれない、DVのトラウマだよ!とかむしろおかしいのは君だよ!と、どんどん精神的に追い込まれていく。透明人間というある種のモンスターホラーというよりも(もちろんその怖さもあるけど)、むしろサイコロジカルなホラーに軸足を置いたのが良かったし、ものすごく怖かったし、それによってより新しく生まれ変わったなと思いました。

エリザベス・モスが主演ということで、「ハンド・メイズ・テイル」ととても重なりました。そこを踏まえてキャスティングしたんでしょうか。ラストの彼女の顔にいろんな意味で痺れましたし、なによりこの映画の出来にとんでもなく痺れました。素晴らしかったなー!