レイニーデイ・イン・ニューヨーク/「君の笑顔は破壊的だ」 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。




レイニーデイ・イン・ニューヨーク


「君の笑顔は破壊的だ」
監督:ウディ・アレンさん
出演:ティモシー・シャラメさん、エル・ファニングさん、他


本国公開中止になった本作。観る前からウディ・アレン問題のほうが先に前に出てくるから、正直映画の中身の内容はほぼ無のまま観ました。

すごく良かったです。


ウディ・アレン作品、僕個人で言うと「カイロの紫のバラ」がオールタイムベストに毎回入れるほど大好きな映画で、そのほかの作品もほぼ観てますが、どれも大好き。という立ち位置です。


てなわけで、本作ですが、皆さんご存知のとおり、まぁ公開までにいろいろありましたね。

しかしですね、ウディ・アレンの問題が今後どうなろうとも、この映画が光輝いてることは間違い用のない事実。素晴らしい撮影と演出、そして何よりウディ・アレンの撮るニューヨークがここ最近でもトップクラスのきらめきを見せていました。

今後、ウディ・アレンの問題がどうなるかわからないし、この空気だともうアメリカで映画を撮ることはないのかもしれないなとすら思いますよね。この作品が、ウディ・アレンが撮る最後のニューヨークである可能性はとても高いんじゃないかな。そんな中この映画は奇しくも、ウディ・アレンによるこれでもかというくらいのニューヨークへのラブレターになっています。なんかいろんな気持ちが湧いてきますな。

今、ウディ・アレンの新作が観れるという環境それ自体が良いことなのか悪いことなのか、これには議論があるかもしれませんが、というかありますが、ちょっと替えの効かない輝きと煌き、そしてウディ・アレンが撮る最後のニューヨークかもしれないという事実が、よりこの映画を甘く切なくしているということは言えるんじゃないかなと思ったり。なによりやっぱりウディ・アレンの映画は「映画」なんだなと、いつものこじんまりとした人間ドラマだけども痛感させられました。


今回の主演2人、ティモシー・シャラメとエル・ファニングはとてつもなく輝いてました。

特に、エル・ファニングはちょっとほんとに凄まじいものがあります。セリフの中で「君の笑顔は破壊的だ」というセリフがありますが、本当に破壊的という言葉がぴったりの破壊力。どの瞬間も過去最高のエル・ファニングの笑顔を叩き出す。ウディ・アレンが惚れ込んでいることがものすごくわかります。

ティモシー・シャラメもとてもよかった。なんでも持ってるのに何も持ってないモラトリアムな彼が、変化するきっかけのシーンである母親との対峙ですね。あの辺の表情の変化が特によかった。ギャンブルがめちゃくちゃ強いという設定も効いてました。理屈で生きてきた彼が理屈を超えた決断をする、そんなラストシーンはほんとに甘く切なく最高に美しいシーンとなってました。エル・ファニングにとってはかなり苦いですが、このシニカルさもウディ・アレンらしい。

うーん今後どうなっていくのかウディ・アレン。これに関しては議論されまくってるし、今後も議論されていくんでしょうが。彼の問題は置いておいて、この映画を映画として観た時の、この上ない輝きは彼がまだまだ第一線の天才であることを証明している、彼にしか撮れない映画でありました。素晴らしい映画でした。