リチャード・ジュエル/決めつけられる恐ろしさ | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。





リチャード・ジュエル

決めつけられる恐ろしさ
監督:クリント・イーストウッドさん
出演:ポール・ウォルター・ハウザーさん、サム・ロックウェルさん、他



イーストウッドの新作ということで「リチャード・ジュエル」を観てきました。いや〜とてもおもしろかったです!


どんな映画でも絶妙な存在感とクソさを見事に演じてきたポール・ウォルター・ハウザーが主演!ポール・ウォルター・ハウザーがこれまで演じてきて持ってるイメージを逆手にとったキャスティングでめちゃくちゃ見事なキャスティングだと思いました。

彼のまずなにより、いらんこと言っちゃう感じ、いらんことやっちゃう感じ絶妙で、しかも過去の行動やめちゃくちゃ銃を持ってるとか、そんなはずはないのに側からみると見事にパズルがハマっていっちゃう感じ、不条理にじりじりと追い詰められていっちゃう感じがものすごく怖かったです。しかもこれはほんとに誰にも起こり得ることだし、僕らみたいにホラー映画やバイオレンス映画を好む人種とかさ、それぞれ性的嗜好も違ったりもするし、よく殺人事件が起きたとき「容疑者の家からバイオレンス映画のソフトが出てきました」とか「こんなAVが出てきました」とか「こんな残酷なゲームソフトが出てきました」みたいな、よく考えるとそれって事件を起こしたことと本当に密接に関係あるか?みたいな報道がなされることってほんとによくあるし。他人事ではない誰にでも起こりうる決めつけられることの怖さがものすごく出てた映画だと思います。


ここ数年、より演出がさらりとしてるというか、ここに来てネクストレベルに行ってる感のあるイーストウッドの演出も冴え渡っていて無駄がないですよね。ちょっとさらりとしすぎてんじゃないかというくらいで、きっかけとなる記者オリヴィア・ワイルドの後半の涙とか、普通ならもっと突っ込んで描きそうなところだし、実際後半の彼女の心の変化みたいなものをもっと観たかった感じはあるんだけど、そこをもさらりと片付けてしまうイーストウッドの無駄という無駄を削り落とす演出は、わ〜すげぇ最近のイーストウッドっぽいなぁと感じたところです。いい意味で。

FBIもほんと怖かったなぁ。犯人ではないとわかってはいるのに、犯人である方向であらゆるピースを無理やり埋めていく感じ。メディアや権力が世間の声を肥大させ個人を殺すことなどいとも容易いということを痛感させられましたし、ちょっと前までヒーローだった男がいともたやすくこうなってしまう。この題材を今のイーストウッドが選んだということも含め、イーストウッドからの忠告だなぁと。あと、今年はサム・ロックウェルの年かもしれないなぁというくらい、ジョジョ・ラビットに続いてほんとに素晴らしい存在感でした。