彼らは生きていた
映画が過去と今を繋げるのだ
監督:ピーター・ジャクソンさん
ピーター・ジャクソンの新作は第一次世界大戦のドキュメンタリー。楽しみにしてた1本なのでそろそろ公開だなぁと公式サイトを観たら近くで公開がなく…しょんぼりしてたらAmazonビデオで発見!レンタルして一足先に観てみました。めちゃくちゃ凄いドキュメンタリーでした…!公開前なのでさらりと感想を。
この映画超凄いのが、過去の記録フィルムとか綺麗に再構築してるんですよね。ボロボロだった記録フィルムを修復してコマ数や色を調整。さらにはBBCが持ってた退役軍人のインタビュー音声を載せ、また効果音や記録映像内の喋ってる口に合わせてセリフを入れてるんですよね。その結果、過去の白黒でカクカクしたザ・記録映像が、ついこの間撮ったような映像に観えるんですよね。
白黒であのカクカクとした記録映像ってどこか作り物のような、実際にあったことだけどどこかファンタジックな自分とは遥か遠い出来事のように僕は感じることがあって。しかし、本作はそんな甘えを許さないわけです。リアルに色をつけ音をつけ現代に再構築された、「戦場」という実際起きたリアルを我々に突きつけてきます。
恐らくとてつもない労力で進んでったプロジェクトだろうな…とひしひしと感じます。とにかく膨大な記録映像や音声をここまで綺麗に復元し、映画的に繋わせる構築力・構成力、なんというか整理力ですよね、これがハンパないんですよね。ピーター・ジャクソン恐るべし。
第一次世界大戦というのがミソで、初めて大量虐殺兵器が投入された戦争であるというのがほんとにキツかったですね。「一般市民は馬に乗って剣で戦ってると思っている」というようなセリフがあるように、これまででは考えられないような恐怖がそこにはあって。それを語るインタビューと復元映像のドライブがハンパなくて、考えたくもない事実がより残酷さを増して描かれます。軍人たちの何気ない戦場の日常、食事や生活描写がちゃんと語られ、人間味を持って描かれることもとても効いてくる。確かにそこに生きていた人間が次の瞬間には死んでいる。観てるこっちに突きつけてくる1本だと思います。
軍人たちが生き残って母国に帰ってからのあの無常感も印象的。「戦争に行ってわかったが、戦争はまったく持って無意味だった。」という言葉がずっと心に残り続けます。
今の技術で、過去と今を繋ぐ、今だからこそ描けた過去ですよね。そしてこんな無意味な戦争が何度も繰り返されたという事実。また繰り返されるかも知れないという事実がそこにはあって、人間はまったく反省しない。まぁ今見なきゃどうするという傑作でした。戦争映画史にも間違いなく残る、語り継がれる1本になると思います。