パラサイト 半地下の家族/家と階段と匂い | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。



パラサイト 半地下の家族

家と階段と匂い
監督:ポン・ジュノさん
出演:ソン・ガンホさん、他



大好きなポン・ジュノの新作でさらにはパルムドールを取ったってことでパンパンにハードルを上げた状態で初日に行ってきました。田舎の深夜回にもかかわらずかなりお客さんも入ってました。いや〜めっちゃくちゃおもしろかったです!


ポン・ジュノ作品はどれも大好きで、どの作品も何度も見てるくらいですがやっぱり魅力は初め想定していた展開やジャンル的なお約束のその向こう側に連れて行かれて、ポン・ジュノっぽいなぁ〜という感じのなんとも形容し難い様々な感情が入り混じったラストにたどり着く…みたいなところで、今回はそのポン・ジュノ的な構造やこれまで語ってきたことのある種の集大成的であり、完成度・強度を持った作品だと思いました。ま、要するにめちゃくちゃおもしろかったし、なんとも言えない感情になりまして、つまり最高でした。

前半は潜入コメディであり、サスペンスであるんだけど、後半はポン・ジュノワールとでも言うような重い展開をしていきます。確かに巷で言われてるようにジョーダン・ピールの「アス」にものすごく近いんだけど、個人的に「アス」に感じてたメッセージ性が先行しすぎてるというかメッセージ性ありきの作りに対する不満は今回は意外にも薄くて(観る前はもっと説教くさいかと思ってた)、しっかりと物語主導で後から浮かび上がってくるような、エンタメ性とメッセージ性のバランスが非常にうまくいった作品だと思いました。思ったよりドエンタメだったのがよかったです。


なにより最高だったのは美術とロケーション。そしてその空間の使い方・見せ方ですね、ここに大興奮しました。ほぼ家が主役というくらい、あの半地下の家と、金持ちの豪邸と、とにかく家が良かったです。

豪邸で広い家なんだけど見終わった後はどんな間取りか完璧にわかるほど、空間の見せ方の刷り込みがうまくて、だからこそバレるかバレないかのサスペンスが超活きてくる。細かい小道具とかの使い方もうまい。さらには階段ですね。主導権を握るものが常に階段の上、握られてるものが下にいる画面設計も効いてて、階段をとても有効的に使ってますよね。

そして後半、さらなる秘密が明らかになってからはさらにこの空間使いと階段使いのうまさに拍車がかかってくる感じも最高にうまい。家の階段はもちろん、後半のスペクタクル的な展開である雨のシーンではこれまで見せてなかった半地下の家と高所得者の家の位置関係を俯瞰でグワーっと見せていく、さらなる街の階段のダイナミズムでこれまで見せてなかった現実を見せていく。流れていく雨水を階段の途中でただただ見つめるしかないあの絶望はほんとに印象深いですね。

さらにその翌日のホームパーティーシーンでの惨劇はたまらんですね。怒りのポイントになるものを「匂い」というどうしようもできない、でも確かに見てる側に想像させる、これもまた身もふたもない現実を突きつけてくる。ここで怒りが抑えられなくなるのも納得というか非常に説得力があり同時に何とも言えない気持ちになるシーンでした。

そしてポン・ジュノと言えばラストシーン。長男の理想と現実。オープニングの靴下からのカットという円環構造も素晴らしいし、彼はこの状況から抜け出せるのけ?可能なのか?とこちら側に再度突きつけてくる。ここから這い上がるんだという希望的なラストにも見えなくはないけど、どちらかというと希望をちらつかせつつも身も蓋もない現実を最後の最後に突きつける、そんなラストに見えました。まぁでもなんとも形容し難いよなぁ。いろんな感情が混ざり合ってて、実にポン・ジュノらしい、最後の気持ちを言語化する難しさをお土産として観客に渡すような、そんな映画でした。

個人的にはポン・ジュノ作品でもかなり上位で好きな作品になりました。いきなりすげぇ映画を見れて嬉しいです!