真実/「演技」と「家族」 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。



真実

「演技」と「家族」
上映時間:108分
監督:是枝裕和さん
出演:カトリーヌ・ドヌーブさん、ジュリエット・ビノシュさん、他



是枝監督の新作「真実」を観てきました。是枝作品は毎年どの映画もベストテンに絡んでくるくらい好きなんですが、今回は割と観る前の熱量が低かったというか…アトロクとかセッション22とかで観る前に監督インタビューを聞き倒したせいかしら…なんて思いつつ。まぁなんにせよ是枝作品なので観てきました。軽やかな映画でした!良くも悪くも。


「真実」のあらすじを聞いたときに女優ものという新たな軸はあるにせよ、すごく「歩いても歩いても」とか「海よりもまだ深く」みたいな是枝さんの帰省映画に近いなぁと思っておりましたが、まさにその通りで。久々に実家に帰ってきて起こる、または浮き彫りになる「家族」という切っても切れない関係性の相手とのあれこれ…というザ・是枝映画的なお話と絶妙なギクシャク感を感じられて楽しかったですね。

何より今回はカトリーヌ・ドヌーブの独壇場。彼女の凄み、底知れなさ、ずるさ、焦り、そしてなによりとびっきりのチャーミングさをバンバン感じる映画になっててね。最近のカトリーヌ・ドヌーブが出てる映画ってまったく観てなくてどちらかというと後追いで見るクラシックな出演作のほうを観てたのでそれがかえって良かったなぁと感じるプロットだったなぁなんて思いました。

そもそもの企画の発案者でもあるジュリエット・ビノシュも最高で、カトリーヌ・ドヌーブという超大物の母の困った言動に対する反応がいちいちおもしろい。切っても切れない感は彼女の反応の良さがより際立てていたように思います。

あと夫のイーサン・ホーク!禁酒中の彼がもう飲むしかねぇ!と酒を解禁するところとか最高だし、子供と遊ぶイーサンは魅力大爆発。さすがでした。


この映画、「演技」と「家族」がテーマだと思います。家族というあたりまえだけどよく考えると特異な関係性をうまく回していくために、それぞれがそれぞれの家族の中での役割をよりうまく演じていくことでうまくいく。最後の方はどこまでが演技でどこまでが真実なのかはわからないんですが、でも少なくとも相手とうまくやるために、家族というものを成り立たせるために、それぞれの役割をまっとうしようとする。家族というもののめんどくささを描きつつも最終的には肯定していく意地わるくも優しい映画だったなと思います。

が、個人的にはちょっと全体的に軽やかすぎて物足りなかったというのが正直なところで。もっとドロドロとしたエグい真実が明らかになるとか、それこそ「歩いても 歩いても」のように隠されていた真実が後半でグッと浮き上がってくるスリリングさのようなものは希薄で。個人的には是枝さんのそういうエグみが好きだったりするので、ちょっと全体的に軽かったかなぁと思ったりしました。

まぁでもフランスに行ってもしっかり是枝映画。もうしばらく日本映画はとらなくてもいいので、海外出資で今まで日本映画ではできなかったことや新しい風景を見せて欲しいなぁと期待しています。

「真実」楽しみましたー!