1987、ある闘いの真実
31年前、確かにそこにあった不条理。
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監督: チャン・ジュナンさん
出演: キム・ユンソクさん、ハ・ジョンウンさん、ユ・ヘジンさん、他
原題: 1987 When the day comes
上映時間: 129分
あらすじ: 真実を伝えなきゃ
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たまむすびの町山さんの映画紹介を聴いて知ったので、観てきました。
素晴らしい映画でした。
映画.comのあらすじはこんな感じ。 |
「ファイ 悪魔に育てられた少年」のチャン・ジュナン監督が、韓国民主化闘争の実話を描いた社会派ドラマ。1987年1月、全斗煥大統領による軍事政権下の韓国。南営洞警察のパク所長は北分子を徹底的に排除するべく、取り調べを日ごとに激化させていた。そんな中、行き過ぎた取り調べによってソウル大学の学生が死亡してしまう。警察は隠蔽のため遺体の火葬を申請するが、違和感を抱いたチェ検事は検死解剖を命じ、拷問致死だったことが判明。さらに、政府が取り調べ担当刑事2人の逮捕だけで事件を終わらせようとしていることに気づいた新聞記者や刑務所看守らは、真実を公表するべく奔走する。また、殺された大学生の仲間たちも立ち上がり、事態は韓国全土を巻き込む民主化闘争へと展開していく。パク所長を「チェイサー」のキム・ユンソク、チェ検事を「お嬢さん」のハ・ジョンウ、学生デモに立ち上がる大学生を「華麗なるリベンジ」のカン・ドンウォンと豪華キャストが共演した。
「デトロイト」「ペンタゴン・ペーパーズ」「タクシー運転手」と、今年は不条理な歴史の負の側面と戦った、または打ちのめされた人々を描いた秀作が多いですが、これもそのうちの一つで、とても素晴らしかったです。こういう映画を作ろうというメンタリティこそ、今の邦画に一番ない部分だし、しかもこういう映画がちゃんとヒットするということがさらに日本が置いてきぼりにされてるなぁと感じるところでもあって、やっぱすげぇなぁと思いましたね。国にとって都合の悪い歴史をちゃんと映画にできる、ってすごく健全なことだと思います。今の日本じゃ作れないよ。万引き家族でもあんなに怒ってる人がいるんだもん、やれやれですな…。
しかもえらいところはちゃんとエンターテインメント作品になってるってところですよね。今作、完全に犯罪ノワールで、敵も味方もすごくキャラ立ちしてておもしろいし、バイオレンス描写あり、泣かせる描写あり、恋愛あり、絶望あり、絶望からの微かな希望あり、とちゃんと娯楽作としてまとめ上げる手腕にもう見事しか言いようがないですね。
最悪な状況の中でも、「正しいことをしよう」とい人々の勇気のバトンがつながれていき、閉じ込められていた真実があらわになり、大きな流れを作り出し、歴史を変える。とても感動しました。
その感動を支えているのは確かな暴力描写と不条理描写、そして圧倒的存在感の悪役、という味付けあってのこと。描くところを逃げずに描くことが、どれほど大事か…ということを改めて感じました。拷問描写はどれもとてもインパクトがあったし、どれも実際に起きたことであるということが何より恐ろしい。腐敗した、常軌を逸した組織の描き方もすごくよかったです。またあの最悪役である彼にも背景がしっかり描かれ、そして彼すらも、巨大な組織のコマでしかなかった…というのがまた怖いし、うまい。
だからこそ、痛々しくも美しいラストシーンが響く響く。「レ・ミゼラブル」のラストシーンとかを思い出したりしたけど、そちらよりもはるかにうまく、エモーショナルなラストだったと思いました。いやぁ圧倒されました。
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好き度: 80点
素晴らしかったです。
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