メッセージ
「これは、あなたの人生の物語」
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監督: ドゥニ・ビルヌーヴ
脚本: エリック・ハイセラー
原作: テッド・チャン
出演: エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー、他
お話: 宇宙人の言語を学びます。
好き度: ★★★★☆ 4.5/5.0点
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「ドゥニドゥニ」ことドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の新作「メッセージ」がやっと公開されましたね。初日レイトで観てきました。とってもおもしろかったし、感動しました。ダイスキ(・∀・)!!
この映画、原作も未読でしたしほとんど情報を入れずに観たので、ほんとビックリの連続でした。こんなお話だったの!と。
映画って、不思議なことにパンッとフラッシュでぜんぜん別のシーンを入れられると、おそらく今までの僕らの経験からこのフラッシュで入れられたシーンは回想で過去のシーンなんだな、と自然と認識してしまいますよね(笑) この思考回路にうまいことミスリードされていました。宇宙人の言語を翻訳してほしいと軍に雇われたエイミー・アダムスが、その言語を理解していくうちにその回想(と思っていた)シーンが挟み込まれ、そこには娘が。そしてその娘さんは病気で死んでしまいます。ああ、こんな悲しい過去がこの人にはあったのかなんて思っていたら、最終的にこの回想と思っていた娘が生まれて、そして病気で死んじゃうというのは今から起こる未来の話で、いっしょに仕事をしたジェレミー・レナーと結婚してそこにできた子供だったということがわかるのでした。
この映画の宇宙人さんたちは過去や未来などの時制の概念がない生物なようで。言語を学ぶということは思考回路そのものというか概念を学ぶということであり、宇宙人の言語を学ぶと、その宇宙人同様時制という概念がなくなっちゃったエイミー・アダムス。過去も未来も現在もなく、宇宙人の表意文字のように円のようにつながっているようです。まさにこの映画も最初のシーンと最後のシーンが一緒の演出で、円環構造になってましたね。うまいな~。
で、ほんとにいろいろと考えちゃうのは最後のエイミー・アダムスの選択ですよねやっぱり時制という概念がなくなったエイミー・アダムスは、このままいくとジェレミー・レナーと結婚して子供ができて、その子供は若くして病気で死んじゃって、とてつもない悲しみが襲うということを知っているわけですね。でも、それでもなお、彼女はジェレミー・レナーと結婚して子供を産むという、仕事中に見たビジョンと同じ運命を歩むことを決めるんですよね~。
で、ここでこういう問答してた映画あったよな今年…と思いまして、そこで思い出したのが「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」だったんですよ。まさかこの映画を思い出すとはと驚きましたが、かなり僕が受け取ったテーマは近いものがありました。「ぼく明日」も、この後2人は一緒になれない運命だということをわかってて、でもそれでも…!!というお話でしたよね。
この後、確実に悲劇的なことになっちゃうことはわかっているのに、そこにわかっていながらむかっていくなんて悲しすぎる…。この選択でけっこう賛否が割れてる様子もありますし、いろいろな倫理的な意見もツイッターでみたりもしましたね。でも、どんなに悲劇的な結果が待っているからといってそこを回避して違う運命戦を歩んだら、それはもう「無」ですよね。この宇宙にもう存在自体がなくなる完全なる「無」ですよ。これほどの悲劇は僕はないと思うんですよ。どんなに悲劇的な結果が待っていようと、その道のりには、というかそこまでの道のり自体がとてつもなくかけがえのないものなはずなんですよね。存在してほしい、存在してくれれば、もう私たちには過去も未来もないわけで。存在さえしてくれれば、あの表意文字のようにぐるぐると永遠に誰かの中に残り続けるんじゃないかなぁ。存在しないなんて、それは死を越えた死なんじゃないかなぁとかいろいろ考えました。とても切ない一見キツイ選択に見えるけど、これはとてつもない人生賛歌だと思いましたよ。
過去も未来もない、今までの人間とはちがう概念を吹き込まれた劇中のエイミー・アダムスのようにみてるこちらも何か新しい概念というか、考え方というか、確実に見る前の自分とは違った自分になれたような気がします。なにより、なにかを変えようと動き出すことに早いも遅いもないのかもなぁと思いましたね。だって我々にはもう過去も未来もないからね!