13の理由 (Netflix)
あの時の僕たちの選択は…。
大評判になっている「13の理由」という海外ドラマ。NetflixオリジナルのドラマでNetflixで配信されております。というわけで、見てみたのですが、本当に素晴らしかったのです。ものすごくキツイ。キッツイけど素晴らしい。わけのわからない涙がボロボロあふれてくる、そんなドラマだったのです。内容が過激すぎるということで、日本ではプロモーションが制限されていたということも話題になりましたね。ではちょろっと感想を。
高校生クレイが主人公。彼のもとにあるカセットテープが届くのですが、そのテープの声の主は2週間前に自殺したハンナ。クレイとハンナは同じバイトだったり、いい感じの関係だったりしたのですが…。そのテープは全部で13面。そこにはなぜ彼女が自殺を選んだのか、自殺に至るまでになにが起こっていたのか、まわりのクラスメイトや友達との関係性はどうだったのか、彼女が自殺を選ぶまでになにが起こっていたのかという時間線と、そのテープを聴いて変化していくクレイたちの現在という時間線が並行して描かれていくかんじ。
1人の女の子が最後は自殺するということが第1話の序盤でわかるのです。なぜ自殺を選んだのかという彼女が死に至るまでに何が起こっていたのか、それをものすごーく丁寧に容赦なく描いていくのであります。つまり、キツすぎなのです……。いじめ、レイプ、ドラッグなどティーンにはかなり刺激的な要素を容赦なくもりこんで逃げずにごまかさず描き切っていたこのドラマ、日本にはまねできないなと思うのであります。案の定日本ではプロモーションは控えめになっているようで…。まぁ納得とも言えますが、ここまで現在のティーンという生き物の影の部分をリアルに丁寧に描いた作品がこれまであっただろうかと思うくらいでありました。
もうお話は、ネタバレしたくないので観てくださいという一言で済ませたいと思います。僕の観終わった感想を少し。「ムーンライト」の感想でも書きましたがやっぱり、人間のあらゆる行動の根幹にあるものって「さみしい」とだからこそ「愛されたい」という感情だと思う、というのが僕の持論。誰からも「愛されない」とわかった時にひとは絶望してしまうのかもしれないなと、しかもその「絶望」へ向かうまでの道のりを13面のテープで観てるこちら側にほんとうにじっくりじっくり丁寧に見せて(聴かせて)いくというのがこのドラマというのは先ほども言った通り。テープを聴いていくうちに、「あの時僕がこの選択肢を選ばなければ、私があの時あんなことを言ってなければ、あの時みてみぬふりをしていなければ…………彼女は自殺しなかったのではないか」と、そいう僕たちの日々の何気ない選択や何気ない言動がは、めぐりめぐって誰かを絶望させる選択や行動になっているのかもしれないと、なんだかこれまでとってきた僕らの人間関係を思い返さざるを得ない内容なのです。しかも、このドラマが偉いのは、主人公のハンナ自身にも原因があったんじゃないかというところがちゃんと描かれているところ。だからこそツラいというか、単純にこいつが悪い、あいつが悪いというところに落とし込んでくれないのです(絶対的に殺したくなるクソ野郎はいますが…)。しかもそれが出てくる生徒たち全員に言えて、だって実人生で当たり前だけどどの人間も単純にカテゴライズなんてできないじゃないですか。ドラマのこの尺だからこそ、語り得た人間描写の数々であり、さらにティーンだけでなく、その原因は大人たちにもあったのではという視点まで。
人には思い出したくなかったり、忘れていたり、はたまた忘れたふりをしていたりする隠された記憶ってあるじゃないですか。忘れたふりにはさせないよ、とばかりにこのドラマはあらゆる意味で僕たちを掴んで離さないのです。こんなことを言うのはアレですが、このドラマ、確実になにか「マジック」が起きちゃってるなと、今までの青春映画、ティーン映画、ドラマも含めて、確実に何かを更新した一本になっちゃってるんじゃないでしょうか。
世界的に社会現象になってるのも大納得の一本でした。超おすすめです。