※けっこうなネタバレあり。ネタバレを知らない方が確実に楽しめる作品なので、気になってる人は読まない方がいいです。素晴らしい映画だったのでぜひぜひ~
グッドナイト・マミー
鑑賞日: 2016年4月4日
鑑賞法: DVD
好き度: ★★★★☆ 4.5/5.0点
僕ならどうしてあげられただろう。
高橋ヨシキさんが映画秘宝で年間ベストに入れていたり、評判が良かったんで気になってたんですが、見逃しちゃいました。てなわけで、はやくもDVD化ということで観てみました。これが、めちゃくちゃおもしろかったのですよー(´∀`)!!
DVD出てまっせ!
グッドナイト・マミー [DVD]/アメイジングD.C.
森と畑に囲まれたけっこうな田舎の一軒家でお話は進んでいきまして、これがかなりの豪邸。母親の帰りを待つ9歳の双子の兄弟が主人公です。が、帰ってきた母親は顔の整形手術を受けており、頭部が包帯でぐるぐる巻きになっていた!さらに性格まで別人のように冷たくなってしまい、兄弟は本当に自分たちの母親なのか疑いを抱くようになります。そして正体を暴くべく彼女を試しはじめるが、その行為は次第にエスカレートしていく。。というお話。
帰ってきたママはなんだか冷たい性格になってたよ(´・ω・`)
ドホラーな売り方をされてますけど、かなり抑制されたトーンの映画でしたし、想像以上に画面がキレイでビックリ。清潔感のある無菌化されたような田舎の佇む豪邸の中に野生の動物のように駆け回る少年2人というビジュアルがなんだかとても不気味な雰囲気を醸し出しておりました。緊張感の持続のさせ方が今年観た映画では一級品の映画だったと思います。なにも起こってないのに怖い怖い。
怖いと思っているのはどっち?
この映画で一番素晴らしかったのは視点の転換なんですよね。最近タマフルで宇多丸さんが「『見る』・『見られる』の関係の逆転」って言葉をよく使いますがまさにそれがキモの映画でした。
序盤から一定して子供たちの視点で母親を見るという視点で描かれるこの映画。整形手術をしてから冷たくなってしまったママだけど、この人ほんとに僕らのママ?っていう子供たちの切実な疑問から、じゃあママかどうかテストしてみようと、そのテストがどんどんエスカレートしていくわけですが、ある瞬間から、あれ?おかしいのは子供たちのほうなのかも?と少しずつ子供たちを信用できなくなっていくんですよね。いわゆる信用できない語り手ものだったんですよね。そしてその疑問がが畳み掛けるように加速していき一気におかしいのは少年たちのほうだった!と確信に変わる終盤にかけてのジェットコースター的展開は素晴らしかったです。
実は息子たちの方だった
ザックリネタバレすると、家族全員交通事故にあって、父親と双子の片方が死んじゃってたんですよね。で、生き残ったもうひとりの双子の兄弟と母親が2人で実は暮らしてたんですね。息子の方は兄弟の死を受け入れられず、イマジナリーフレンド的に兄弟を作り出していて、現実と空想が完全に一緒になっちゃってたんですね~。母親の整形は事故によるものだったのでした。最後は「テスト」がエスカレートし、母親は焼かれちゃいました(´・ω・`)
この間、TSUTAYA発掘良品で最近出た「回転」を観たんですけど、すごく近いものを感じました。信用できない語り手もののサイコホラーってこともそうですし、視点の転換のさせかた、あと明らかに「回転」にオマージュを捧げてると思われる、「母親の口の中にゴキブリを入れる」というイメージ。あれは「回転」でも同じようなイメージがありました。
とにかくめっちゃくちゃおもしろかったので「回転」も超お勧め!
- 回転 [DVD]/紀伊國屋書店
- ¥5,184
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視点が入れ替わり、事の真相がわかると、ハンパなく悲しい切ないお話だったことがわかって、もうここ最近はずっとこの映画のことを考えてるくらいです。今まで冷たく怖い母親だったけど母親の視点で観てみると、おかしくなっちゃった息子をどうしていいのかわからなくなっちゃったんだろうなぁと思いますし(お前が病院に行く前に息子を病院に連れて行けよとは思うけどw)。
あと息子の視点からしたら、もっと切ない。整形した母親にずっと「ママを返せ」って言い続けるんですよね。つまり時間が完全に事故前で止まっちゃってる三宅監督のいう『生きてるけど心霊映画』でもあるという。ともかく、息子のすべての動機は母からの無償の愛を求める純粋な欲望ゆえなんですよね。ことの顛末を考えると切なすぎるんですよ('A`)
これ、俺ならこの息子にどうしてあげられただろうか?と考えざるを得ない映画になってて、だからこそ怖い映画でした。決して他人事じゃない普遍性もあったんですよね。このお母さんもほんっとに難しい立場だったとは思うけど、一回たりとも息子を抱きしめないんですよね。これがあればちょっとは違ったんじゃないでしょうか。でも明らかに息子はおかしくなっちゃってるし…(´ε`;)ウーン 息子とちゃんと話して、触れ合うという勇気が持てなかった母親の悲劇がこの映画でしたし、母親のこの悲劇は息子の悲劇でもあるという…。何とも言えない後味のとても素晴らしい映画だったのでぜひ!
おわり