「ある優しき殺人者の記録」を観た。 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。



ある優しき殺人者の記録
9月11日(木) 24:15~ 新宿バルト9




好き度: ★★★★☆ /5点



白石作品の到達点!



「コワすぎ!」シリーズや「オカルト」などの白石監督最新作、バルト9で観てきましたが、これがすごかった!!

もちろん今回もPOV方式で、しかもワンシーンワンカット(風)で全編行くんですよ。つなぎ部分もとても巧みです。「コワすぎ!」のトイレの花子さんで廃校での驚異的な長回し(風)がありましたが、あれの最新進化系という感じでしょうか。凄いことを考えるなぁと、しかもそれをよく実行したなぁと思います。POV方式の映画は最近とても増えてきたけど、やっぱ白石監督はこの分野では確実に世界レベルですよね。観ればわかっていただけるのではないでしょうか…。いろんな意味で到達点的作品だと思います。

登場人物は5人。記者のキム・コッピ(「息もできない」でおなじみ)、精神病院から抜け出してきた18人を殺したとされる殺人犯、途中から登場する日本人カップル(葵つかさちゃんと米村亮太郎)、そして撮影者はなんとあの「コワすぎ!」シリーズの田代!まさかの田代!同一人物です。

記者のキム・コッピのもとに連絡が来まして、取材に行きます。相手は幼馴染であり大量殺人鬼として精神病院に入れられていた男から…。男とキム・コッピは幼馴染で「18人殺したと報道されてたけど、実は25人殺してる。」とか「全部で27人殺さなきゃいけない」とか「死んだ幼馴染を生き返らせることができる」とか「俺は神の声が聞こえる」とか「『素晴らしき哉、人生!』って映画知ってる?まさにあれなんだ」とか、まぁ、正気の沙汰とは思えない発言を連発。「やべぇ…マジキチ…」とか思ってると、「もしかしてこいつの言ってることほんとなのかも」っていうような偶然とは思えないことが次々起こるのです…。


主演は「息もできない」のキム・コッピ。日本語上手!




優しき殺人者。




途中で登場する日本人カップル。葵つかさちゃん、脱いでます(ノ´∀`*)




カメラマンはコワすぎの田代!(a.k.a.白石晃士)




カメラマンにコワすぎ!の田代というキャラクターを持ってきたのは大正解だと思いました。POV映画に常に付きまと「それでも撮影し続ける、この勇気ある撮影者は誰だよ」問題に、「いや、だってあの田代だよ?」っていう納得のいく答えが用意されていて、違和感なく観ることができました。あとやっぱ、カメラマンが田代とわかったときの喜びってのがやっぱありましたねw あの独特のビビり演技とかも最高でしたし、韓国スタッフにはあのビビり演技がすごい好評だったと白石監督がおっしゃってましたw 田代、最高だよ田代!

物語の突拍子のなさはたしかにあるんですが、その突拍子のないことがでもたしかにそこで起こってるのがリアルに見えてる…という映画的なウソがとても気持ちいいんですよね。これは白石作品の特徴ですね。そんなわけないがあり得ちゃう快感というか。


なぜ日本人のカメラマンがいるのかという理由とかも含めてキレイにまとまってました




途中に出てきた日本人カップルとのやりとりは、すげぇ怖いんだけど、すっげぇ笑っちゃう面白いシーンでした。ぶっちゃけ悪ふざけだと思いますがwとてもよかったです。 「自分で首つらないと女犯すぞ!」っていうんだけど、たぶん男が童貞でどうやっていいのかあんまりおぼつかない感じとか、そうかと思えばカップルがド変態で「こういうシュチュエーションで犯されるの夢だったんだよ!」とか言い出したり、いざレイプってチンコいれるけど童貞だからか超早漏とか、かと思えばカップルがいきなりセックスしだして、犯人の方もあっけにとられるみたいな。この辺のシュールさが最高だし、ちゃんとしっかり脱ぐ葵つかさおよび関西弁は最高でした。この悪ふざけは僕はアリですよ~。


「お前、あいつのでビシャビシャじゃねえか」つってセックスしだす狂人カップルには犯人同様あっけにとられましたw




最終的に白石作品でおなじみのウニョウニョが出てきて、あっちの世界を通って奇跡が起こり生き返るんですが、今回ちょっと気になったのは、ちょっと一方的にハッピーエンドすぎるというか。いくら奇跡は起こって全部チャラになったとはいえ27人を殺したという事実は違う時空のなかでは存在しているわけで、やっぱちょっとこれでいいのかな感はありました。あれだけのことをやって完全にハッピーエンドというのはちょっとなんか…もうちょいそれなりのダークな落とし前か、もしくは自己犠牲的ななにかがあってもよかったのかなぁなんて思うのはまじめすぎるかしら!



あと今回うれしかったのはやっぱ予算がちょっとずつ上がってきているのか白石監督のあの異世界表現がちょっとずつなんかリッチなカンジになってるんですよねwちょっとテンションあがりました。たぶん白石監督はほんとうに描きたいあの異世界の表現が頭の中にあると思うのでぜひもっと予算積んでみてみたいですよね。(あのチープな異世界表現も逆に怖いんだけどね)





というわけで、「ある優しき殺人者の記録」まちがいなく、「すごい」映画であることは間違いないと思います。とてつもない計算と自肩の技術のもとにできている映画ですよね。気が遠くなるような段取りがいくつもあったと思うんですよ。それをよくぞこんなにきれいすぎるくらいまとまった映画にしたなぁと、やっぱり白石監督すごすぎると思います。

白石監督作みたことない人もここからとりあえず入ってみるといいのではないでしょうか。今、アップリンクで「殺人ワークショップ」もやっているのでそちらもとても楽しみです!



おわり



ひさびさに見返しちゃいました。

素晴らしき哉、人生! HDマスター [DVD]/IVC,Ltd.(VC)(D)
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僕のベスト白石作品。すごいです。

戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-04 真相!トイレの花子さん [DVD]/アルバトロス
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スタッフ


監督

    白石晃士 

製作総指揮

    杉原晃史

    イ・ウンジョン

プロデューサー

    紀嘉久

    チェ・ユリ

脚本

    白石晃士

撮影

    白石晃士

    ソン・サンジェ

照明

    イ・ソンファン

編集

    キム・ムンピョ


キャスト


    ヨン・ジェウク

    キム・コッピ

    葵つかさ

    米村亮太朗



作品データ

製作年 2014年

製作国 日本・韓国合作

配給 ティ・ジョイ、日活

上映時間 86分

映倫区分 R15+