her 世界でひとつの彼女
7月7日(月) 19:30~ 渋谷シネマライズ
好き度: ★★★★☆ 4/5点
人間がテクノロジーに置いていかれる日
スパイク・ジョーンズ新作、アカデミー賞脚本賞受賞作ということで楽しみにしていましたので観てきましたが、とても楽しかったですし、ズシンときましたー。物語的に、「ルビースパークス」みたいな映画なのかなぁと思ってましたが、意外にというべきかかなり硬派なテーマでスパイクジョーンズ的なおふざけやユーモア(なんてったってジャッカスの人ですから…)はありつつも、OSと恋愛すること、というテーマを真剣に掘り下げていて結末も含めとても興味深かったです。
主演はホアキン・フェニックス。奥さん(ルーニー・マーラ)と離婚協議中で心を痛めていたところにスッと心の隙間に入ってきたのが最新のOS。声はスカヨハ姐さんでございます。OS相手にまじめに恋に落ち、まじめに恋愛をし、向かい合う、設定は特殊だけどしっかりと恋愛映画でした。とてもまじめな映画です。
OSとの恋愛描写はとてもおもしろかったし、スパイク・ジョーンズがちゃんとOSと恋愛したら…という設定とちゃんと向かい合った結果だと思います。このOS、サマンサをスカヨハの声にしたっていうのがもう勝利でしょw 一発目の登場シーンでもうノックアウトですわw ものすごくエロいし、当然だけどプログラミングされているので、こっちが何を言ってほしいか、何を言ったら喜ぶかというものの完璧な回答が返ってくる、つまり最強のオンナ!菊池凜子と別れた後これを撮ったスパイクジョーンズ、なにがあったんだろう。ラブプラス、やってたのかな。あと、マタニティヌード好きなのかな。。笑
こっちの望むものをすべて与えてくれるものとの恋愛に果たして、成長はあるのか。これは去年の「ルビースパークス」が思い浮かびますね。でも、今回もっとも違うのは、身体性がないということですね。触れることができない。人間というか生物の恋愛にはやっぱり「触れる」っていうこと、身体性、温かみ、感触、これをやっぱり一番求めるし、大事だし、今回もその身体性のなさが一番の悩みの種になり、関係性に亀裂が入ってしまう原因にもなっちゃうんですよね。やっぱ「触れる」って大事なんだな、人間と人間の触れ合い。去年の傑作「セッションズ」がずーっと頭の片隅にありました。「セッションズ」と表裏の映画と言えると思います。
素晴らしいんで観てない人は絶対観てね!
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まぁでも希望があるなと思ったのは残された人間たちも、少なからず成長はあるというところ。ラストシーンのエイミー・アダムスとホアキン・フェニックスの触れ合い、本当にさみしいとき、哀しいとき、そばに人間がいるその温かみ、ぬくもり。このあたりまえのことをもう一度思い出させてくれるようなラストシーンで感動しました。
思い出してみるとこの映画のエキストラの町の人々、ほとんどの人が、イヤホンをして一人で行動して、相手はOSなんですよね。とても画面造りや美術はおしゃれなんだけど、おそらく意図的に人間と人間の触れ合い描写が明らかに意図的に排されていて、おしゃれなのに冷たい画面に見えるのが興味深かったです。でも、それって今もそうじゃないかな。みんなスマホと対峙している通勤電車。よく見る風景だし、近未来ものとはいえかなり今に近いものかもしれないですね。だからこそ、お隣さんとくらい仲よくしとくのもいいんじゃない?というのを説教臭くなく教えてくれているようにも思えるラストは好き。
あと、この映画特出すべきは女優陣で、もうね、俺得としか言いようがない完璧な女優選出と演出で、女優ウォッチャーの私からすれば、マジ最高の映画でございました。素晴らしかった。まず、何よりよかったのが、ルーニー・マーラ。犯罪的にかわいいですよ(´Д`) 「ウサギさん、後ろから抱きしめて」は名台詞だなクソっ!笑
イチャイチャシーンは微笑ましいだけにとても切ないのです…
ネタバレになりますがOSとの恋愛に成長はあるのか…という問題に最も納得のいく答えを出してくれましたね。成長するのは人間じゃなくて、OSの方なんだ!と。これ、とてもおもしろかったなぁ。人間はもはや時代遅れなんだよ!と言わんばかりに、身近にあったと思っていたOSがどんどん人間とは違うスケールのものに大きくなっていく、そして、去る!機械が成長して独立し、人間のもとを離れるという発想はとても好きだし、今後近い将来を考えると、これものすごくリアルに感じられました。人間のほうが置いて行かれるカンジ。
このラストシーン周辺で思い出したのが、「かぐや姫の物語」だったりしました。ものすごく似てますよね。ずっと身近にいると思ってた存在が、実は人間とは全く違う概念の中で動いていて、遂には人間のもとを去り、残された人間はなすすべないという構図どっかでみたと思ったら。。
あと、俺の嫁ことエイミー・アダムス嬢は今回も安定のかわいさでございまして、何よりよかったのはカジュアルな衣装。生活感がない役が最近多かったので、今回の衣装選びはありがとうとしか言えない素晴らしいものでありました。
カジュアルなエイミー・アダムス、5億点。
そして、チョイ役ですが、僕の大好きなオリヴィア・ワイルド様も最高に美しかったですな!オリヴィア・ワイルド感まんさいのちょっと気の強い役でこりゃまたとても素晴らしい。オリヴィア・ワイルドは「カワイイ私のつくり方」に続いていい仕事をしております!
抱かれたい女1位でおなじみオリヴィア・ワイルド姐さん
あとホアキン・フェニックスはとてもじゃないけど、「ザ・マスター」と同じ人とは思えないですよ。まじすごくね?おしゃれでカッコいいんだけど、絶妙に痛くてダメなそのバランスが完璧でした。
あと、ちゃんとおふざけを入れてくるのも好印象。テレフォンセックスシーンには名場面が多いですが今回もなかなかのものを見せてくれました。「猫の死体のしっぽで首を絞めて!」には爆笑。「ああ~気持ちよかったわ。じゃあね(ブツッ)」の置いてけぼり感も含めて、あと、その後のサマンサとのテレフォンセックスとの対比にもなっていてとてもよかった。サマンサとのテレフォンセックスは、本来なら笑えるシーンになりかねないところなんだけど、ちゃんと成立していて、異常だけど、切実なセックスにみえてくるのがとても複雑だけど良いシーンでした。
最後に苦言的なものがひとつ。ちょっと長かったですね。もうちょい短くなんないかな。120分は切ってほしいし、欲を言えばあと20分くらい縮めてほしい!すごーくテンポがゆっくりな映画なのでしょうがないっちゃしょうがないですが。。。
というわけで、僕はher、大変満足しました。楽しかったです。そして、近い未来、絶対こういう感じになっていくよね。てかもうなってるかも。人間がテクノロジーに置いて行かれる日もすぐそこまできてるかもね。
おわり
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スタッフ
監督
スパイク・ジョーンズ
製作
ミーガン・エリソン
スパイク・ジョーンズ
ビンセント・ランディ
製作総指揮
ダニエル・ルピ
ナタリー・ファーレイ
チェルシー・バーナード
脚本
スパイク・ジョーンズ
撮影
ホイテ・バン・ホイテマ
美術
K・K・バレット
衣装
ケイシー・ストーム
編集
エリック・ザンブランネン
ジェフ・ブキャナン
音楽
アーケイド・ファイア
オーウェン・パレット
キャスト
ホアキン・フェニックス セオドア
エイミー・アダムス エイミー
ルーニー・マーラ キャサリン
オリビア・ワイルド デートの相手
スカーレット・ヨハンソン サマンサ
クリス・プラット ポール
マット・レッシャー チャールズ
作品データ
原題 Her
製作年 2013年
製作国 アメリカ
配給 アスミック・エース
上映時間 126分
映倫区分 PG12