「渇き。」を観た。 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。






渇き。
6月27日(金) 17:25~ 新宿バルト9




好き度: ★★★★☆ /5点



「小松菜奈」という発見




中島哲也監督、「渇き。」巷では非常に賛否両論のようで、監督がひよった声明文をだしたり、いろいろ話題の映画ですな。僕は中島作品は「下妻物語」が大好きで、松子、パコは微妙だなぁと思っていた矢先に来た「告白」にぜんぜんのれなかったので、今回はどうかなぁと思っていってきましたが、全体的な感想としては言いたいことはあるけど、僕は結構好きな映画でしたよ~。

まず、う~んと思ってたところから書いておくと、やっぱ中島演出が………ってところなんですよね。情報量、色彩、カット割り、いいんですよこのテイスト自体は。でもそれで全部いくか…っていうところで、凝った画面の作りこみはわかるんだけど、それをひっきりなしにやるから、結果、単調になっちゃってるんですよね。だからすげぇ長く感じる。この映画2時間切ってる映画なんですけど、2時間半・3時間くらいに感じてしまいました。抑揚、メリハリがないから結果、だれちゃいました。

あと、巷ではグロすぎるという理由で批判されているらしいですが、僕はこの映画のそういう描写はぜんぜん甘いというか、漂白されていて残念だなぁというところがいくつもありました。率直に言うと、カット割りすぎだと思うんですよね。もちろん新鮮な描写はいろいろあって満足な気持ちもあるんですが、不愉快な気持ち悪い場面をスタイリッシュにとる必要はないし、逆効果だと思うんですよね。あと、この映画、バイオレンスはけっこう描くのに、セックス・レイプは直接的に描かないというのも残念でした。レイティングの壁をスタイリッシュな中島演出でごまかされたなぁって感じ。この映画のテーマ、テンションでバイオレンスもそこそこ頑張ってるだけに、性描写はもっと直接的に、レイプシーンもいくつもあるんだからカチャカチャカット割らずにじっくりイヤ~なカンジで描いてほしかったし、そうするべきだったと思うんですけどね。

ま、まとめると、中島演出が邪魔ってことですね(笑)





じゃぁ、なぜこの映画が結局好きな映画になったかというと物語と役者が好きだったのです(´∀`) とにかくこの映画、まともな人間はゼロ、キチガイしか出ない、珍獣・猛獣大集合映画で、とても不愉快で最高でした。徹底的に観客を不快にさせようという気概は感じられてとても良かったと思います。

役者はみんなよかったなぁ~。主演の役所さん、ここ最近でもここまでクズな主人公がいただろうかというくらい徹底してキチガイクズ野郎のモンスターでとても素晴らしかったです。薬中、アル中、躁鬱、DVというとにかくいろいろ兼ね備えまくっているモンスター。役所さんも楽しそうに演じていて観ていてとても愉快でした。




妻夫木、オダギリのサイコパス野郎っぷりもちょっとデフォルメがきつすぎて笑っちゃうギリギリのバランスだけど、ここまでクズだときもちよかったなぁ。役所、オダギリ、妻夫木のサイコパスモンスター三つ巴の屋上からのカーアクションは、いろいろすごかったです。妻夫木の「はい、自殺」とか、3人とも死ななすぎだとか、この辺はとても楽しいブラックコメディでした(そのつもりで撮ってるのかは知らない)





そして、この映画で最も輝いていて、魅力的だった、娘役の小松菜奈さん。この子の画面上での説得力、存在感、美しさ、凛としたたたずまい、そして悪魔性、この難しい役をこの小松菜奈さんという女優さんはすべて兼ね備えていて、ほんと、僕はこの小松菜奈さんがとっても好きになりましたよ。ここにこの女優さんを当てはめることができたことが、勝利なんじゃないかな。




言ってみれば、加奈子は「哀しき復讐者」で、そこがとても魅力的でした。原作では明確に中学時代のボーイフレンドのための復讐という目的が見えてきますが、今回の映画ではそこの目的はちょっと縮小させて、言ってみれば「VS腐ったこの世界」みたいなけっこう大きめのスケールで、こっちもけっこう魅力的。加奈子の目的をふわっとさせたことは批判の対象にもなるかと思いますが、このほんとうに底の知れない感じ、何を考えているのかわからない感じ、VS世界のためにすべての感情を捨て、人間性を捨て、カラッポになってメチャクチャ、そう、メチャクチャしまくる加奈子は最低で許されるべきことだとは思いますが、カラッポ故の魅力、潔さ、女ヴィラン・ファムファタールとしての魅力を凄まじく感じました。カラッポだからなんにでもなれる、美少女の形をした入れ物、男も女もみんなが寄ってきて加奈子に魅了されるのもものすごくわかりますよね。加奈子はカラッポだから。自分の欲望通りに変容する入れ物だから。

 


主人公役所さんのクズ行為の数々、クサッタ世界がこの美しき入れ物加奈子をつくってしまった。そう考えると、ラストの雪山でのシーン。結局、加奈子は死んでいたというオチ。見た後はなんかラストあたりで尻すぼんだなぁとか思ってしまいましたが、役所さんはじめ加奈子に魅了された人間たちがすでにいない加奈子を巡って今まで見てきた地獄絵図をやっていたと考えるとすごく皮肉なラストだとも感じました。空白の存在に右往左往させられ、最後の最後まで全員美しき入れ物である加奈子に全員踊らされていて、そして最後の雪山に行き着いたクズ野郎役所さんも最後の最後のストップモーションまで加奈子を求め続ける、これこそが壮大な加奈子の復讐劇にも見ることができました。超、哀しいけどね。。

 


まさかの中谷美紀!あの車でのやりとりはけっこうドキッとして、いきなり加奈子が中谷美紀のおっぱいをガッツリつかむじゃないですか。僕、今まで中谷美紀のおっぱいというものを意識したことがなかったのでね、なんか唐突でもろもろがリアルなもろもろで、ドキッとしました。ここ最近でもとてもナマナマしいおっぱいで、着衣ではありましたが、なんかそのリアルなおっぱいに、ドキッとしました。はい。こんな、残念な文章で、おわります。笑


渇き。中島演出が邪魔だけど、とにかく小松奈菜さんがとっても魅力的で、お話も好きだったので全体的には支持したい感じ。これ、中島監督じゃない人が監督してほしかったなぁ。「凶悪」の白石監督とかで見たかったな!

あ、あと、僕の好きなでんぱ組の「でんでんぱっしょん」けっこう長めにかかっててうれしかったです。

小松奈菜さん、次は山Pと恋愛ものをやるらしいです(笑) 山Pはゲイヤクザにたっかく売れそうなので、どんな恋愛映画になるのか、山PのPがガッツガツ掘られるのか、楽しみですね。


おわり


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スタッフ

監督
    中島哲也
製作
    依田巽
    鈴木ゆたか
プロデューサー
    小竹里美
    鈴木ゆたか
アソシエイトプロデューサー
    村野英司
協力プロデューサー
    伊集院文嗣
原作
    深町秋生
脚本
    中島哲也
    門間宣裕
    唯野未歩子
撮影
    阿藤正一
照明
    高倉進
録音
    矢野正人
美術
    磯見俊裕
セットデザイナー
    仲前智治
装飾
    林千奈
スタイリスト
    申谷弘美
ヘアメイク
    山崎聡
VFXスーパーバイザー
    柳川瀬雅英
VFXプロデューサー
    土屋真治
VFXスーパーバイザー・CGディレクター
    増尾隆幸
編集
    小池義幸
効果
    伊藤瑞樹
音楽プロデューサー
    金橋豊彦
音楽
    GRAND FUNK INC.
キャスティング
    黒沢潤二郎
    細川久美子
記録
    長坂由起子
助監督
    甲斐聖太郎
ラインプロデューサー
    加藤賢治

キャスト

    役所広司 藤島昭和
    小松菜奈 加奈子
    妻夫木 聡浅井
    清水尋也 ボク
    二階堂ふみ 遠藤那美
    橋本愛 森下
    國村隼 辻村医師
    黒沢あすか 桐子
    青木崇高 咲山
    オダギリジョー 愛川
    中谷美紀 東里恵
    森川葵 長野
    高杉真宙 松永


作品データ
製作年  2014年
製作国  日本
配給  ギャガ
上映時間  118分
映倫区分  R15+