先日、浜松まで赴いて、会社の催す研修というものを受けてきた。いわゆるビジネススキル・セミナーみたいなやつで、2日間の泊りがけである。

まあ学生の頃からセミナーとか研修とかいう類いのものは嫌いで、なるべく避けて生きているのだけど、今回は業務命令のような形で、半ば強制的に参加させられたのだった。

折しも師走の初めの忙しい時期に、2日間も拘束する上に、受講前に事前課題までやって来いというのだ。んな暇あるか。

しかたがないから研修前夜に家でやろうと思ったのだが、そんな夜に限って我が家の新生小僧がグズってなかなか寝ない。ようやく寝かしつけてとりあえず風呂に入り、ふと時計を見ると既に午前2時だ。翌朝は6時に家を出なければならない。

何はともあれ課題に取り組み始めるが、とにかく眠い。そりゃそうだ今何時だと思ってんだ。幾度となく睡魔に押し倒されながら、申し訳程度にやっつけ、なけなしの眠りに着いたらすぐに起きる時間であった。

さて、寝不足全開で浜松の研修会場へたどり着いたおれは、のっけから完全に不機嫌である。塾へ行っても講義を聞く気にならない受験生のような心境だ。

この手の研修というのは、参加者がサボれないように予め5人くらいにグループ分けされた座席がしつらえられていて、ことあるごとにそのグループでディスカッションなどをさせる。これが非常に面倒くさい。自分の意思とは全く無関係に集められた人たちが、建設的な議論などそうそうできるものではない。ただただ、初対面の人と話すために気ばかり疲れるだけなのだ。

そんなのごめんだ、と、省エネモードで必要最低限の参加しかしないことに決めたところで、研修が始まる。

始まったとたん、私の意欲はさらにさっそく大きく削がれた。この手の研修やセミナーにはよくあるのだが、講師が、講師である自分に自己陶酔しているように見えて仕方がないのだ。我々に何かを伝えるのではなく、人前で研修の講師をやることが目的になっているような、見ているとこちらの気持ちの隅っこの方が冷めていくような人。塾講によくいましたよね。

もはや、完全にあの頃の学生ノリで、本気でサボりたいと思ったが、大人なのでそういうわけにもいかない。ただひたすら、時が過ぎていくのをおとなしく待つしかない。

しかしこういうときに限ってグループのディスカッションが全く盛り上がらないので、ちょっときっかけを与えてみたり、自分の考えを申し述べてしまったりするのが我ながら悲しい。こういうときにスパスパ仕切れる人って、なかなかいないんだなあ。誰かやっておくれよ。

さらにまずいことに、申し訳程度にしかこなしていないおれの事前課題が、グループ代表のサンプルとして参加者の前で披露されることになりかける。グループ内で満場一致でおれのを推そうとするので、全力で自分のダメさと他の人の素晴らしさを指摘し、何とか難を逃れる。おれはやる気ないと言ってるだろうが。

のっけからほうほうの体で、昼食の時間を迎える。昼食は研修施設の食堂で。我々は軟禁状態で、一歩たりとも外へ出させてはもらえないのだ。

この食堂での昼食というのがまた、全員が決まったメニューを同じだけ食べるという、強制的没個性システムになっている。驚いたことに、選り好みをして小鉢を受け取らなかったりすると、あとから給食のオバサンみたいなのがテーブルを巡回し、「あなたこれ食べないのですか」などと尋問しにやって来るのだ。ほっとけよ子供じゃあるまいし。

そんなこんなで、無味無感動な昼食が済むと、午後も自己陶酔型ドヤ顔講師によるぐったりうんざりの研修は続くのだった。

本当はこれがもう1日繰り返されるという恐怖の密室研修ツーデイズだったのだが、なんかもうこれ以上書いても一向に楽しくならなさそうなので、ここまでにしておこうね。