3/8(金) ロマンスは必然に ~蒟蒻ゼリー裁判~ | そんな感じ。 since March 28, 2005

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2024年03月08日(金) 雪→晴

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韓国ドラマ「ロマンスは必然に」で、ヒロインのキム・ソナ演じるアン・スジンは娘が粉末ゼリーを誤嚥して窒息死し、損害賠償を提訴するも、一審、二審と敗訴し、夫は後輩のCAと浮気して離婚、離婚後も舅の介護を続け、舅が残したマンションを譲り受けるも、弁護士費用のために借金が嵩み、マンションは競売にかけられ、CAの仕事も退職勧奨の対象で、あげくの果てに借金取りから腎臓の売却まで迫られているという悲惨過ぎる状況だ。

スジンがここまで悲惨な状況になったのは、粉末ゼリーを製造した菓子メーカーを相手取った裁判で負け続けた為なのだが、「日本でも同じような事例がある。」とか、「原材料は日本から輸入した」とか、やたら「日本」が出てくるのが気になる。

実際、日本でそんな事例あったっけ?

思い付くのは、こんにゃくゼリー裁判くらいなんだけど。

 

で、裁判所のサイトで下記の事例の裁判記録を読んでみました。

 

平成22年11月17日 神戸地方裁判所姫路支部 平成21年(ワ)第278号損害賠償請求事件

 

『 1歳9か月の子が蒟蒻畑を食べた際にのどに詰まらせ死亡した事故につき,両親がこんにゃくゼリーの設計上の欠陥による製造物責任及び不法行為に基づく損害賠償を製造会社等に対し求めた事案について,こんにゃくゼリーは通常有すべき安全性を備えており製造物責任法上の欠陥はないとして,請求を棄却した事例』

 

2008年07月29日(火)1歳9か月の男児が蒟蒻ゼリーの誤飲により窒息、8月12日に脳死判定、9月20日、多臓器不全により死亡。

2009年03月03日、両親がこんにゃくゼリーの製造会社に損害賠償請求を提訴。

2010年11月17日、神戸地裁にて「棄却」判決。 → 両親は控訴。

2012年05月25日、大阪高裁にて控訴審判決も「棄却」。

 

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裁判記録を読むと、原告側のボロ負けなんですよね。

まぁ、「棄却」されているわけですから。

2008年07月29日(火)、祖父と祖母の家に原告の姉(伯母)とその子供3人、死亡した1歳9か月の男児(以下、男児)とその兄が集まって昼食を取り、祖母が食後にデザートとして与えた半解凍のこんにゃくゼリーを男児がのどに詰まらせ死亡しという事案

 

『5人の孫のうち、死亡した男児のみがこんにゃくゼリーのミニカップ容器のフィルム製上蓋を剥がすことができず、祖母に剥がしてもらった。』という記述を見て、他のお孫さん達に比べて、男児はまだ小さくて力も弱く、当然咀嚼や嚥下力も弱かったのだろうなと思った。

その点は判決でも強く指摘されていて、『当時1歳10か月足らずであることからしても、同人に食物を与える際は、こんにゃくゼリーに限らず、保護者等が食べやすい大きさに加工するなどし、摂取中はそばについているなどして与えるのが通常考えられるところ、本件では、祖母はこんにゃくゼリーをミニカップ容器のまま1歳9カ月の男児に与え、自らはテレビに見入り、伯母は入眠しており、男児がミニカップを与えられ誤嚥するまでの一部始終を全く知らなかったというのであるから、およそ本件こんにゃくゼリーの通常予想される使用形態とはかけ離れたものであるといわざるを得ない。』と糾弾されている。

 

【原告側の主張】

①一般に餅やパンなどは喉につまられる危険性があるという前提で、小さくちぎったり、よく噛んで食べるが、こんにゃくゼリーはゼリーの一種として認識され「蒟蒻」として想起されない。

②ミニカップ容器はその形状が上向き食べ、吸い込み食べを誘発し、設計上の欠陥がある。

③こんにゃくゼリーの警告表示は、高齢者は視力、注意力が減退しているし、商品を手に持つと隠れてしまうなど表示の欠陥がある。

④危険性のある食品を販売するにあたって、問屋、小売店に対して販売の際の注意事項を指示する措置を取っておらず、特売商品として平積みで陳列されたり、菓子コーナーに陳列されていた。

 

しかし、『そもそもこんにゃくゼリーには設計上の欠陥があるにもかかわらず重大な被害の危険性を容認し警告表示をしてまで流通させる社会的有用性は存在しない。』とまで主張してしまうのは、「なんだかなぁ~。」という気がしてしまう。

群馬県の地場産業だぞ。

生産農家、従業員、消費者とステークホルダーは幅広い。

当時、原告側がネットで叩かれていたのは、こんなところに原因があるのかと思ってしまった。

 

【認定事実】

1995年以降、国民生活センター及び農林水産省はこんにゃくゼリーによる死亡事故の事例を公表。

1996年7月から、被告会社では注意書の表示を開始し、10月からミニカップ容器を左右対称のハート型とし、内容量を37グラムに増大し、11月から『吸い込まずにミニカップの底をつまんでこんにゃくゼリーを押し出すよう絵入りで説明』『小さな子供、高齢者には不向きである旨の警告表示』を行った。

1999年11月から被告会社はミニカップ容器を左右対称のハート型とし、内容量を37グラムから25グラムに減量。

(これ以降、ミニカップ容器の形状及び内容量の変更は行われていない。)

2007年9月、全国こんにゃく協同連合組合等の業界団体は、警告表示にピクトグラフの導入、各メーカーから小売業者に対し子供向けのお菓子の傍らに置かないようお願いするなどの事故防止対策を発表。

2007年10月から、被告会社は、こんにゃくゼリーの外側の表面・裏面・個別包装の蓋上に警告表示の記載を開始。

2008年7月29日、本件事故が発生し、同年9月20日、1歳9か月の男児が死亡。

 

【(被告会社の責任)について裁判所の判断】

 

①原告らは、こんにゃくゼリーは、あくまでも「ゼリー」のうちの一種類であるとの認識が一般的であり、一般消費者はゼリーと同様に柔らかく、口の中で用意につぶせる食品として認識して購入すると主張する。

事故当時の蒟蒻畑の知名度は90パーセント、事故報道認知率は85パーセントを上回り、その食感を好んで蒟蒻畑を食用する消費者が60パーセントを上回っている。

 

②こんにゃくゼリーにつき、通常有すべき安全性を備えており、製造物責任法上の「欠陥」はない。

こんにゃくゼリーは、硬さが強く破砕され難い、水に溶けにくい、冷温では硬さ、付着性が増加することは、いずれも蒟蒻自体の特性であるから、これらをもってこんにゃくゼリーの設計上の欠陥とはならない。

こんにゃくゼリーのミニカップ容器につき、その形状が上向き食べ、吸い込み食べを誘発するものかについては、柔らかいプラスチック製で左右対称のハート型をしており、中身を容易に押し出せるように配慮した構造であった。

 

③子供及び高齢者が息苦しそうに目をつむっているイラスト(ピクトグラフ)が描かれ、こんにゃく入りゼリーであることも明示され、外袋の裏面には、子供や高齢者はこんにゃくゼリーをのどに詰めるおそれがあるため食べないように赤字で警告されており、ミニカップの容器の底を摘まんで中身を押し出し、吸い込まずに食するよう、摂取方法が同容器の絵とともに記載されており、外袋表面の中央には「蒟蒻畑」と印字されており、誤嚥による事故発生の危険性を周知するのに必要十分であった。

したがって、警告表示の欠陥は認められない。

 

④販売方法の不適正について

こんにゃくゼリーをどのように販売するかは、第一義的には小売店の専決事項である。

 

消費者が中身を吸い出すような食べ方でこんにゃくゼリーを摂取したというのであれば、仮にその結果誤嚥等の事故が発生したとしても、それは当該消費者が責任を持つものであって、被告会社の責任を基礎づけるものではない。

 

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一審で「棄却」という厳しい判決にもかかわらず、原告が控訴にいたったのは、『男児が事故後、8月12日に主治医から脳死状態(植物状態)であると告げられ、被告会社の関係者にこんにゃくゼリーによって植物状態になった男児を直接見てもらいたいと思い、被告会社に電話したが、被告会社はその後もまったく連絡をしてこず何ら対応しなかったことに強い怒りを持っている。』との記述があり、その強い怒りが原動力になったのかと思われる。

 

でも、判決文を読むと、祖母の不注意が指摘され、伯母は『こんにゃくゼリーを与える前に、既にリビングの床の上に横になって入眠していた。』とあまり世間に公表されたくない生活習慣まで証言させられて、責任の所在は原告の家族側にあるとされているのだから、控訴は家族にとって苦しみをもっと深める結果になったのではないか。

 

また損害賠償請求額が約6,200万円で、そのうち弁護士費用として原告である男児の父と母で各300万円(合計600万円)を請求していることから、600万円は着手金と考えられ、裁判の勝敗にかかわらず支払わなければならない筈。

控訴審に進むと、プラス600万円で、弁護士費用だけで最低1,200万円はかかっていそう。

 

亡くなった男児は高度不妊治療(顕微授精)を経て生まれてきた子供で、死亡による慰謝料として2,400万円を請求していた。

被告会社側は損害賠償請求について、『すべて争う。』として、『なお、幼児の死亡慰謝料額は、1,800ないし2,000万円程度が一般である。』とも述べていた。

差額の600万円ないし400万円は不妊治療にかかったコストを上乗せしたのであれば、それはそれで世知辛い。

 

原告側にとっては辛い裁判だったと思いますが、裁判記録を読んで、製造者責任があるならば、消費者責任もあるのだということを学べました。

卑近な例として、これから自身が年を取っていくにあたって、食べ物はながら食べをせず、よく噛むことを習慣づけたいと思いました。

そして、高齢の方や、体の弱い方に食べ物をお贈りする際には、食べやすいものを選びたいと思います。

餅菓子はやめておいた方が良いかなと。

 

裁判記録を読んで、改めて蒟蒻畑が食べてみたくなり、買ってきました。

 

マツモトキヨシで149円でした。

 

これが”子供及び高齢者が息苦しそうに目をつむっている”「ピクトグラフ」ですね。

絵を見て意味はよく分からないけど、子供と年寄りにはヤバそう…ということは分かる。

 

お子様やご高齢の方は、のどに詰まるおそれがありますので、たべないでください。」と書かれているけど、オーバー還暦の私は高齢者かしら…と思ってネットで調べてみる。

65歳からが「前期高齢者」ということで、食べてもOKと自己責任で判断。

 

個々のミニカップの蓋にピクトグラフと「お子様や高齢の方はたべないでください」の警告表示が。

蓋は剥がしづらく、結構、力が必要。

水分が多い食品なので、剥がしづらい設計にしているのか、力が弱い幼児や高齢者が食べられないように安全上の配慮なのか。

いずれにせよ、この蓋を自分で剥がせなくなったら、食べないようにするのが一番。

 

 

やわらかいプラスチック製のミニカップの側面をちょっと持っただけで、こんにゃくゼリーが出てきます。

このミニカップの左右対称のハート型の形状に企業努力を感じます。

こんにゃくゼリーは自然な桃の味がして美味しかったです。

おでんの具ではこんにゃく、すき焼きではしらたきが一番好きな、こんにゃく好きとして、しこしこした食感も気に入りました。

もっと、歯ごたえがある方が良いな…と思ったけど、事故後、安全上の理由からこんにゃく粉の量を10%減らして製造しているんですよね。