11/21(火) 超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA | そんな感じ。 since March 28, 2005

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日常生活の中で、ふと感じたこと。

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2023年11月21日(火) 晴後時々曇

【横浜】最高気温 17.5℃ / 最低気温 8.8℃

 

三井記念美術館で開催されている『超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA』展を見てきました。

 

13:55

入館料は1,500円。

美術館サイト内の割引クーポンを提示すると100円割引になりました。

 

展示室に入る前に、映像ギャラリーで作者と作品のビデオを見ました。

現代作家さんらの超リアルな作品、蝋燭の炎で作品内の空気が暖まって動き出す龍、花器に水を注ぐと開く花とか、これからの鑑賞にテンションが上がりますアップ

 

本郷真也(1984年生まれ)

金属を叩いて変形させる鍛金(たんきん)の中でも特に難しいとされる鉄鍛金の技法を駆使した作品。

こちらの作家さんは設計図も原型も作らずに、いきなり製作するという天才。

蝋燭の炎で動き出す龍(円相)もこの方の作品だけど、そちらは撮影可ではなかった。

 

鉄を叩いて、こんなリアルな脚まで作れてしまうって、ホント、すごいなぁ~とただただ感心して見惚れてしまう。

ところでこの作品は鷲だよね、カラスじゃなくて。(←おいっ! 黒いからって区別がつかんのかっ!)

 

14:16

福田亮(ふくだとおる 1994年生まれ)《吸水》 2022

黒檀、黒柿、柿、真弓、朴(ほお)、苦木、柳、ペロバローサ(ブラジルに生育する樹)

29歳の若い作家さんだけど、着色しないで、木材の自然の色を組み合わせて、独自に編み出した立体木象嵌という技法で製作した作品。

水滴部分の厚みを残して板を掘り下げ、研磨を重ねてツヤを出してリアルな水滴を表現している。

手間暇と根気とリアルの追求がスゴ過ぎる!

 

大竹亮峯(おおたけりょうほう 1989年生まれ) 《月光》 2020年

鹿角、神代欅、楓、榧(かや)、チタン合金

鹿の角をノミで削りだして47枚の花弁を作っているなんて、この薄さ、驚異的。

しかも、花器の水を注ぐと月下美人の花がゆっくりと開くなんて!

 

雄しべ、雌しべも超リアル。

 

松本涼(1969年生まれ) 《涅槃》 2021年

 

『大菊の枯れゆく姿を涅槃仏、すなわち悟りを開いて入滅する釈迦の姿に見立てている。

仏花として供えられることの多い菊花は、役目を終えると打ち捨てられ枯れるにまかせられる。

その様子を木彫の作品とすることで、もののあわれや無常観を表現した。』

 

展示室で作品を見ながら、解説を読んで、「ほぉ~、なるほど~。」と思ったけど、今ブログを書きながら、釈迦に見立てた菊が打ち捨てられて、もののあわれって、なんか違わなくないか?とも思うけど木彫の菊の素晴らしさは変わらない。

 

《涅槃》が展示されていた和室の床の間には宗旦筆の《利休遺偈と利休像》の掛け軸が掛けられていました。

 

昔、お茶を習っていながら利休の遺偈を知ったのはたった今なんですが、わびさびの利休さんの遺偈ならもっと枯れた境地が書かれていたのかと思いましたが、やっぱ秀吉に切腹を命じられて義憤にかられていたんですね。

『力囲希咄(りきいきとつ)』って、「えい!やぁ!とう!」という気合の掛け声らしいです。

 

人生七十 力囲希咄 吾這寶剱 祖仏共殺
(じんせいしちじゅう りきいきとつ わがこのほうけん そぶつともにころす)

 

堤る我得具足の一太刀 今此時ぞ天に抛
(ひっさぐるわがえぐそくのひとつたち いまこのときぞてんになげうつ)
 

明治の七宝作家、並河靖之(1845~1927)の作品。

繊細でキレイ。

 

前原冬樹(1962年生まれ) 《一刻》スルメに茶わん (木彫) 2022年

朴、油彩、墨

とことん一木造であることにこだわる作家さん。

スルメもクリップとチェーンもすべて、ひとつの木から彫りだされ繋がっている。

ビデオで前原氏が「イカの胴体と脚を別々に歩って繋げても誰にも分からないけど、オレには分かる。」と強いこだわりを語っていらした。

 

イカの質感も、クリップの金属的な質感も、みんな一本の木で表現しているところがスゴ過ぎる。

 

焼いて、マヨネーズと醤油で食べたくなるようなリアリティ。

超絶技巧って、唸るよね~。

 

彦十蒔絵 若宮隆志(1964年生まれ) 《ねじが外れている》モンキー、工具箱、ねじ 2023年

モンキー:麻布、天然漆、銀粉  工具箱・ネジ:ヒバ材、漆、銀粉

 

『金属製品を漆工でまったく同じ質感に再現した「見立漆器」。

モンキーは乾漆技術をを用いて作られており、銀粉を使い金属のサビを表現している。

工具箱はヒバ材を用い、漆が塗られたもの。

自分たちが地道な作業を繰り返し、このような見立漆器を制作していること自体が、他者から客観的に見ると「ねじが外れている」ように見えるかも知らないという自虐的な意味も込めてこのタイトルが付けられた。(解説文より)』

 

いや、この金属にしか見えない工具箱と工具は漆器なの!?

乾漆って、奈良時代の仏像の製造方法よね? 激しく手間がかかる。

金属の錆び感まである工具箱が木でできてるなんて!

「ここまでリアルなら、本物の工具箱とモンキーを置けばよくね?」という元も子もない思いが一瞬、頭にもたげるほどのリアリティー。

そのリアリティーの追求におそろしいほどの地道な作業を繰り返せる情熱は、ねじが外れていると一瞬思うかも知れないけど、やっぱり偉大で、作品を見ると感嘆する。

 

青木美歌(1981~2022) 《あなたと私の間に》 2017

ガラス、ステンレススティール

 

えっ、青木さんは去年亡くなっている?

41歳という若さで?

 

とても美しい作品。

クリスマスを思い浮かべました。