会田誠 天才でごめんなさい | そんな感じ。 since March 28, 2005

そんな感じ。 since March 28, 2005

日常生活の中で、ふと感じたこと。

関心したこと。

その時の感性のおもむくままに気ままに書き留めています。

2013年02月09日(土) 曇り


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六本木駅からヒルズへ向かう地下道には、会田誠展の巨大広告が掲げられています。


会 田 誠  天 才 で ご め ん な さ い


ポスターに使われているのは、会田誠さんの代表作「滝の絵」。

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六本木ヒルズのヒルサイドにある会田誠展の広告。

こちらは氏の「あぜ道」という作品が使われています。


女の子の髪の分け目とあぜ道が一体化している面白い作品です。

前から見るとこんな感じになるんですかね?


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はなわ さん


広告を見ながら、夫に「これが会田誠さんの作品だよ。」と説明したら、

「ものすご~く君の感性に合いそうな絵だね。」と言っていました。

「あなたも見る?」と聞いたら、「絶対イヤだ!」と言うので一人で見ることにしました。


入館料は1,500円。 こちらのチケットで東京シティビューにも入れます。


会田誠は、奈良美智や草間弥生らとともに『新ジャポニズム』の代表的な作家として、

国際的注目を浴びつつあるそうですが、彼の得意の題材といえば、

う○こ、小腸、ゴキブリ、美少女といったところでしょうか。

今回は、90年代から現在までの作品が本人の解説付きで展示されていました。


会田さんの作品には、風刺画的な作品も多いですが、

私はその中では、『人プロジェクト』が実にシニカルで脳が痺れるくらいの感動を味わいました。


その作品は、アマゾン辺りとおぼしき密林の一画を、巨大なアスファルトで固め、

アスファイルとの上に白い『人』という文字を書いたさまを描いた絵の左右に、

それぞれ英語と日本語で、そのプロジェクトの展開マニュアルが記載されている作品です。

絵の中には「火炎縁蜚蠊図(かえんぜつごきぶりず)」に描かれたのゴキブリくらいのスケールで、

資材を運ぶヘリコプターが描かれています。


プロジェクトマニュアルには、まず生命力旺盛な熱帯雨林の地を選び、

次に植物をすべて伐採し、川や湖沼があれば埋め立て、大地を真っ平らにならす。

そこをアスファルトで固め、横断歩道に使うような白い塗料で「人」と書くと記載されています。

「Y」と勘違いされないように、「人」という文字は明朝体で書くようにという実に細心な指示まであります。


これって、まさに人類が累々脈々と続けてきた営みを表現した作品ですね~叫び


それから「世界バカ会議」も非常に好きだったのですが、

「新宿御苑大改造計画」にもガツンと来る物があありました。

日頃から新宿御苑に漠然とした違和があったそうですが、ある日、

『新宿御苑は日展だったのだ!』と気が付いたのが、御苑の改造を思い立ったきっかけだっとか。

『日展に出品されている作品には、自分より技術的に優れている作品が数多くあるが、

しかし“いけてない”。 その“いけてなさ”が新宿御苑に通じるものがある』云々・・・。

いやぁ~、こんなこと書いて大丈夫か!? さすが天才!


他には「戦争画 RETURNS」シリーズの展示室もありました。

このシリーズの作品は廃材の襖に描かれていました。

戦意高揚の為に描かれ、その後、まったく描かれることがなくなった戦争画を現代の感性で描いたというコーナー。

本人の解説にも戦争画の代表的な作家として藤田嗣治の名が挙げられていたけど、

会田さんの一連の「戦争画 RETURNS」を眺めながら、私は、

フジタの「アッツ島玉砕」や「サイパン島同胞臣節を全うす」 を思い起こしていました。

フジタは従軍してこれらの作品を描いたのではないそうだけど、

見ていて辛くなるほどの迫力と悲惨さが伝わってくる作品でした。

戦時中は、この絵の前に賽銭箱が置かれ、人々が絵を見て拝んだのは鎮魂の気持ちからだろうし、

今見ても、辛くて「戦争は嫌だ」という反戦の気持ちを抱かせるだけの力がある。

レオナール・フジタはすごい画家だったなぁ~と改めて思ったのでした。


さて、午前中は「R15+」の映画『テッド』を見た私ですが、会田誠展には、

「R18+」の通称『18禁部屋』という展示室があります。

会田さんの作品には性的にドギツイ表現があり、それらの作品は、

この『18禁部屋』にまとめて展示したそうですが、ワタシ的にはあまりエロさは感じませんでした。

「犬」シリーズはエロいというより背徳的って感じかな。


展示は撮影禁止でしたが、唯一、撮影が許可されていたのがこちら


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「考えない人」


座って、“考えていない”のは会田さんが考案した「おにぎり仮面」というキャラ。

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後ろから見るとはっきり分る通り、“黄金の台座”部分はうんこです・・・。

体の体積より巨大なうんこはありえないから、何日分かの堆積したうんこなのでしょうか。

既に草木が生え、何も考えてなくても、人はうんこにより、

輪廻の世界に組み込まれているということを表現した作品なんですかね!?

(↑って、ひねりも何もない、何も考えてない感想ですが~。)


そういえば、以前にもガラス造形作家の増田洋美さんのインスタレーションを見て、

“うんこは再生だ!”と感じたことがありました。


→ 2008年08月12日(火) かるたら日記「インスタレーション」


“インスタレーション”といえば、会田さんの展示作品に『パンタロン』という映像がありました。

上野公園でパンタロンを穿いてずっと突っ立っている人物と、周囲の反応を撮った映像でしたが、

まぁ、はっきり言って、その芸術性はまるっきり理解できなかったのですが、

“パンタロン”という言葉の響きには、とてつもない郷愁を感じました。

(この言葉に郷愁を感じるのは、40代後半以降の世代かな。)


それから、『18禁部屋』にあった映像だった記憶していますが、

『美少女』という文字だけで欲情できるか?というテーマに沿ったインスタレーションがあり、

美術館とおぼしき壁面に「美少女」という文字が書かれ、

その前に裸で立つ男性(おそらく会田さんご本人かと。)が

文字を眺めながら延々、股間を擦り続けるという映像が62分位続くという映像も分らなかったな~。

文字だけで欲情できるか?という発想自体がアートなんですかね!?


終盤の展示室には大作が展示されていて、

それらの作品は文章では表わすことができないくらい素晴らしかったです。

やっぱり「滝の絵」が一番好きでした。


会田さんのアートの表現手段は多岐に渡り、字も上手だし、文章も巧み。

ヴィン・ラディン似のイケメンでビデオで能弁に語り、また、作品解説まで自ら書いている。

多才過ぎて、逆に天才的なカリスマ性が薄れてしまっている感じもあるけど、

展覧会はとても楽しめました。


絶景の東京パノラマも楽しめて、入館料1,500円はかなりお得に感じました。

会田誠展の会期は3月31日までです。