昭和55年6月、宮崎市の青島海岸から、原敕晁(ただあき)さん(88)=拉致当時(43)=が北朝鮮に拉致された。狙いは姿を消した原さんに成り代わり、日本人として工作活動を行う「背(はい)乗り」だったとされる。

 事件を主導したとされるのは、警視庁公安部が国際手配している北朝鮮工作員の辛光洙(シン・グァンス)容疑者。後に韓国当局にスパイ容疑で逮捕された。平成9年10月8、9日付産経新聞が紹介したソウル地裁の判決文で、原さん拉致に至る克明な経緯を知ることができる。

 それによると、工作員として教育を受けた辛容疑者は「日本に浸透して合法身分を獲得」するよう指令を受け、大阪市内の飲食店で働く原さんに目をつける。前科がなく、独身だったことなどから拉致実行を決定。辛容疑者は貿易会社役員を名乗って協力者とともに、「新しい仕事を世話する」などと原さんを青島海岸に誘い出し、連れ去ったという。

 辛容疑者はその後、原さんの戸籍抄本を入手し、原さん名義の保険証、運転免許証、パスポートなどを取得。国内外を飛び回り、工作活動に従事しているさなかに韓国で拘束された。
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https://www.iza.ne.jp/article/20240824-NJCDZLQS5NOZRAPRMZTR5E636I/