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夜が過ぎて、朝がくる。
部屋を出て、帰ってくる。帰ってくる頃には、また夜になっていて、当たり前のことなのだが、当たり前のように繰り返えされていく。夜――朝――夜――朝――、今、地球儀を、影になる境目の部分を弾いて、回して、加速つけて、速く――ひとまず金曜日まで、早送りできればいいと思う。
どの部屋もおなじ形の量産型のドア。部屋のどこからでもみえるドア。憎らしいドア。
あのドアを開けたらなにもかも忘れてしまって、またドアを開けて部屋へ戻るまで、記憶を取り戻せないんだ。
週末の残り香。陽だまりの記憶。あなたのぬくもり。
腕を伸ばしても、部屋にはなにも無い。指をなぞっても、部屋には繋ぐのもはなにも無い。眠ってみても、部屋には記憶だけしか残ってい無い。手持ち無沙汰に任せて、油性で今日の日付を塗りつぶす。
音のない部屋。色のない部屋。温度のない部屋。
でも、部屋は知っている。週末の福音。陽光の記憶。――明日には、その灰色のドアを開けて、あなたがくる。必ず約束の時間よりも少し早く、私はまだ身仕度の整わない儘、その隙を狙って。
夜明けの太陽。
求めることは、ひとつ。冷えきってしまったこの部屋に光を。かじかんだ指にぬくもりを。私の胸に焔を。
強く。
重なり合うように。
強く。
包み込むように。
もっと強く。
溶ける位に。
融解する痛みに負けないように、私も自分の身体を守る為、強く、強く、抱き返す。
強く、強く!
沸騰する呼吸。太陽の灼熱。屹度、煉獄の隠喩。
強く、強く、もっと強く!そして、熊殺し!