いつの間にかもう3月。
先月末のことになりますが〈金子文子と朴烈〉を観てきました。
韓国映画好きの強い味方、シネマート心斎橋です。
どういう映画かというと…
公式サイトによるストーリーをご紹介してみますね
1923年、東京。社会主義者たちが集う有楽町のおでん屋で働く金子文子は、
「犬ころ」という詩に心を奪われる。
この詩を書いたのは朝鮮人アナキストの朴烈。
出会ってすぐに朴烈の強靭な意志とその孤独さに共鳴した文子は、
唯一無二の同志、そして恋人として共に生きる事を決めた。
ふたりの発案により日本人や在日朝鮮人による「不逞社」が結成された。
しかし同年9月1日、日本列島を襲った関東大震災により、
ふたりの運命は大きなうねりに巻き込まれていく。
内務大臣・水野錬太郎を筆頭に、日本政府は、関東大震災の人々の不安を鎮めるため、
朝鮮人や社会主義者らを無差別に総検束。
朴烈、文子たちも検束された。
社会のどん底で生きてきたふたりは、社会を変える為、そして自分たちの誇りの為に、
獄中で闘う事を決意。
ふたりの闘いは韓国にも広まり、多くの支持者を得ると同時に、
日本の内閣を混乱に陥れていた。
そして国家を根底から揺るがす歴史的な裁判に身を投じていく事になるふたりには、
過酷な運命が待ち受けていた…
こう聞くと、ものすごく暗くて重たくてしんどい映画のようですが
それが不思議とそうでもないんですね。
もちろん時代的背景はちゃんと理解しておかなくてはなりませんが、
別の視点から見るとこの映画はとてつもなく痛快な青春恋愛ドラマなのです
主人公は大正時代の日本でアナキスト運動に身を投じた朝鮮人青年、
イ・ジェフン演じる朴烈(パク・ヨル)なんですが、
スクリーンを掌握していたのは紛れもなく彼の恋人であり同志であった
金子文子の圧倒的な存在感です
演じたチェ・ヒソという女優さん、まず日本語の上手さに舌を巻きましたね
この手の映画にありがちな妙な日本語で興ざめ、という場面は全くありませんでした。
小学校時代5年間日本(大阪)に住んだ経験があるとのことですが
それに加えて人一倍の努力も惜しまなかった彼女、
韓国の主要映画祭で新人女優賞の6冠を総なめにしています
法廷で傍聴席に向かって「静かにしろ!」と怒鳴りつけたり
文子が啖呵を切る場面がよく出てきます。
この時代の日本にこんな女性がいたのかとそのあたりも驚きですが
彼女の子供っぽいまでの純粋さと真っ直ぐすぎる愛情表現に触れると
知らず知らずのうちにその魅力にはまってしまうんですよね
きっと朴烈も彼女に押され気味だったんだと思います。
下の写真は2017年にソウルで入手した韓国版のチラシ。
日本版と大きく違うのはパク・ヨル(原題です)の顔のアップのみで
金子文子の姿は全く出ていないところ。
もちろんイ・ジェフンは人気・実力もある有名俳優ですが
この映画の魅力はチェ・ヒソにあると言っても過言ではないと思います。
それほど金子文子という女性がチャーミングに描かれていました
未曾有の大災害となった関東大震災の混乱のさなか
「朝鮮人が井戸に毒を入れた」とのデマが東京を中心に広がり、
歪んだ恐怖心から自警団を結成した民間人によって
数千人とも言われる朝鮮人が虐殺されるという事件が起こりました。
日本語をうまく発音できない者を朝鮮人と見なして殺害したので
中には中国人や聾唖者である日本人も含まれていました。(Wikipediaによる)
こんな悲惨な差別に満ちた時代にあって
エネルギッシュにひたむきに愛を確かめ合うふたりの姿は
こちらが気恥ずかしくなるくらいストレートです。
日本と韓国の歴史の中で忘れてはならない実話ですが
この男こそ、と見込んだ人生のパートナーを信じ、愛し、支え、
いささかも揺るがなかった強い女性の物語でもあります
私にはとても真似できないなあ…と思ったのも事実。
いやあ~久々にボディブローを食らったすごい作品でした。
シネマート心斎橋での上映は3月8日まで。
3月9日からはシネ・ヌーヴォXでの上映が決まっていますので
是非ご覧になってみてください
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