メメント
博士の愛した数式
私の頭の中の消しゴム
とはちょっと違う。
簡単に言うとボケである。認知症と言うのかもしれない。
まぁ余り深い意味はないので掘り下げないが、いよいよ俺の頭はちょっとマズイことになってきた。
お金をおろしに銀行に行ったのに財布を忘れた。
仕事に行ったのに社員証を忘れた。
スーパーに洗剤を買いに行ったのに目に止まった特売のティッシュペーパーを買っただけで帰ってきてしまった。
頭を洗っていて、シャンプーをした後なのに次トリートメントの番だったかわからなくなり、またシャンプーからやり直してしまう。
全て複数回体験しているもので書いてて情けなくなってくるが、こんなのはまだいい。
やり直しがきくからだ。
つい先日ハワイに行ったと言う話をした。
旅行にはトランクケースがつきものである。
自分は手荷物対応可能なギリのサイズのトランクでいつも移動しているのだが、実は今回の旅行でワイキキの空港内でトランクを紛失していた人間である。
中身のチェックでベルトコンベアを通したはいいが、その直後から受け取りもせずにスタコラ先に進んだのである。
気付いたのは1時間半後。
搭乗直前に同伴の人間に「あれ、トランクは?」と言われて初めて気づく始末である。
置き引きだの、強盗だのと言った話ではない。
所有権を放棄してしまっていたのだった。
かくしてワイキキの空港で僕の名前は放送に乗った。
「**様、いらっしゃいましたらカウンターまで起こし下さい。」
つい昨日の話。
いつものようにチャリ通をしていたが、退社時間に小雨が降っていた。
このままじゃ置いて帰るしかないので、ついでとばかりに池袋の知り合いの家に遊びに行った。
一通り遊んで帰ろうとしたのが23時
外はすっかり冷え込んでいる時間である。
・・・あれ、コートどうしたっけかなぁ?
「こんな寒い日にコート会社に忘れてくるやつはいない」
とは盟友のセリフ。
忘れるとかそう言う次元じゃなくて、外に出た瞬間に体を持って知るはずだと言いたいらしい。
確かに。
でも俺は気付かなかったのだ。なんで?と言われても答えようがない。
仕方なく肩を縮こまらせながら、帰ることにした。
さらに雨もやんでいたので会社のそばに置いていたチャリを拾って帰ることにもした。
電車を乗り継ぎ、寒い外を歩きながらようやくチャリ置き場へ到着。
しかしまた、事件である。
・・・チャリのカギどうしたっけかなぁ?
考えてみればすぐにわかった。
コートの中である。
まったくこんな寒い思いして遠回りしながら会社の方へ戻ってきたのにとんだ無駄足である。
ちなみにこの時間の会社はおそらく開いていない。
仕方なく今来た道を引き返し、電車に乗り直す。
家に到着したのは0時を回っていた。
もう帰ったら寝るだけだなぁと思いながら最後の道を歩いている。
当然そこで事件である。
・・・ってか、家のカギどうしたっけかなぁ?
ちなみに家のカギはチャリのカギと一緒にキーケースにひっかけてある。
そんな俺に向かって、
チャリ置き場で気づけよ・・・
気づいていればまだ会社に飛び込むことは出来たかもしれないじゃないか・・・
さすがに今からじゃ無理だよ・・・
つうか、もう終電だろ・・・
メールと言う文明の利器を通じて盟友がささやいた。
「ネカフェ直行w」
金がかかる
落ち着けない
着替えられない
ヒゲそれない
明日は当然仕事
もうそういうこと考える前の問題でだるい・・・。
途方に暮れること10分
短時間とは言え、この間にも容赦なく冬の嵐が身を襲いかかっている。
つうか、今にでも布団入りたいほど眠いから。
北国だったら人生まで諦めちゃうかもしれない。
・・・やはりネットカフェしかないな。
何をどういうきっかけかわからない。
財布を取り出したとき?
携帯を取り出したとき?
カバンを漁ったとき?
スーツの胸ポケットの中にさっき手を突っ込んだ時は無かったはずの堅い感触があった。
チャリのカギを探したときも、さっき家のカギを探したときもなかったこのキーケース。
まさか・・・。
かなり遅いクリスマスプレゼント。
嬉しさのあまり、今年初めて泣いた。


