富士山を表すのに「一度も登らぬ馬鹿、二度登る馬鹿」と言う言葉がある。
確かに前回登ってまさに死に物狂いで帰って来た時は、もう二度と登らないと誓ったはずだった
なのに何でまたこんな決心をしてしまったのかなぁ・・・。
8月5日(木)
突然、週末の土日を使って富士山に登ろうと決める
一週間延ばすとお盆シーズンに直撃するし、
二週延ばすと寒くなりそうだったのでもうこのタイミングしかない
一応、月曜は有給を取ろう。明日仕事行ったらお願いしよう
8月7日(土)
前回同様、22時出発を目指していたが、前日にまさかの飛び入り参加者が出る
しかもそいつは当日仕事である
俺の上を行く勢いを見せつけてくるやつがこんな土壇場に現れるとは。
そんな訳で迎えに行ったり、スバルラインはマイカー規制だったりで
気がつくと23:00を迎えていた
ってか、マイカー規制の振替バスは最終便が23:30だったのね
危うく何も出来ずに帰らされるとこだった
8月8日(日) 1:00
<5合目>
準備運動をしてようやく出発
この時間じゃ山頂で御来光は間に合いそうもない
まぁいい、その方が時間を気にせずに登れる
とりあえず、前回は登頂したとは言え、完敗に終わったと言っていいほど辛い思いをした
だから次に登る時はちゃんと走りこみをしようと考えていたのだが、結局今回も思いつきで始めてしまった
このままでは前回の二の舞であることは免れないので、何かしらの対策を考える
となると、やっぱり体力の無駄遣いをしないことだろう
・ゆっくりスタートして息を整える
・足をなるべく上げない
・休憩時間も座らない
たった3つだけだが、恐らくここが核心なはず
大丈夫、なんとなるさ
前回より歳を4つほどくっちまった懸念があるのは内緒だ
急遽参加した相方も俺と同じような準備不足だったし、自信もないと言ってたので先の打ち合わせをして出発をした
<6合目>
40分ほどで6合目に到着
警備員らしき人がビラを配っていて強引に手渡してきた
ゴミ捨て禁止とか言ってゴミに配るなよ
思わずそんな悪態をつく
っが、よく見るとそれは富士山の地図だった
山小屋の位置、名称まで書いてある
これは便利だ
なんだよ、こう言うのは1回目の時によこせよ
また悪態をつく
でもまぁ4年も前のことなんて全然覚えてないのでこの先役に立ちそうだ
危うくゴミと一緒に捨てるとこだった俺にこんな声が聞こえてきた
「それをすてるなんてとんでもない!」
さて、そんなやり取りはあったものの、前回同様に休むほどの場所ではないのでここは休まずスルー
おそらく前回よりもゆったり入っているので問題ないだろう
とは言ったものの、どうしても前回の苦い記憶が呼び起こされる
この6~7合の道中で終わったと言ってもいい記憶
前回は根性だけで乗り切ったが、出来れば鼻歌を歌いながら登り切りたい
そのためにゆっくり入ったのだ
・・・なんとその成果は抜群だった
驚くほどに息は全く乱れない
前回あんな辛い思いをしたのが嘘みたい
一度も立ち止まることなく、一気に7合目まで行く
さすがにこれからの距離を考えると鼻歌まではいかなかったが、
危険と感じたら少しスピードを緩めて歩いてさえいれば問題なし
息を乱さないギリギリと歩き続ければよい
やはり前回はハリキリすぎたらしい
尚、どうやら今回も相方の方が体力がありそうなことがこの辺でわかる
だがここは俺に少し付きあってもらうことにした
とにかく今無理してバテてしまったら全体としてもっとペースが落ちるのだ
とは言っても周りの人達よりも平均して早いペース
相方に恵まれていると言うのか、恵まれないと言うのか、、、
<7合目>
今回も時間を計るのを忘れてしまった
さっきの40分って数字も本当のところ覚えていない
つうか、1:00スタートってのもぶっちゃけ怪しい
こう言うのはしっかり記憶に留めないと次苦労するんだよ
・・・え、次あんの?
7合目から8合目のロッククライミング
さて、ここで心得3カ条の2番目が崩れてしまう
ハイ、足を上げないと登れません
場所によっては手も使わないと、、、
この辺から体力温存とか言ってられなくなる
ところで今回は前回より涼しい
それともスローペースが功を奏してか、汗が余り出ない
それはそれでいいことのように思える
だが、裏を返すと喉もあまり乾かない
そうなると、用意したペットボトルが全然減らない
体力温存とか言いながら、いつまでも重りを背負ってロッククライミング
命の水を何で無理やり飲まにゃならんのだ
ちなみに、今回用意したのは「いろはす」
温州みかん味が美味しい、アレである
まぁ今回採用したのは味とかの問題じゃなくてペットボトル
ゴミ捨てが出来ない富士山で、飲み終わったペットボトルほど腹が立つものはない
その点、こいつはペシャンコに出来てしまう
えらいぞ、いろはす
<8合目>
そうこうしている間に8合目最初の山小屋へ到着
この辺で徐々に空に明かりがさしてくる
だが、おそらくまだ日の出まで少し時間がある
大分空気もひんやりして来たのでこんなところで立ち止まっていては身体を冷やすだけだ
と言うわけでギリギリまで登ってみる
ところで各山小屋では登山記念と称して金剛杖に焼き印を押してくれるのだが、
その内の一つに元祖室と言うのがこの8合目の山小屋群の中にある
そしてこの山小屋は俺にとってちょっとした意味がある
ここでは、その年の干支に応じた焼き印を押してくれるのだ
前回は4年前だったので「犬」
そして今年は「虎」
わざわざ前回使った金剛杖をとって置き、また持ってきたのはこの意味合いが強い
前回の相方DAIちゃんなんて、毎年集めてコンプリート中らしい
変態である
さて、焼き印を押してもらったところで何やら外が騒がしくなってきた
とうとう日の出が始まりそうであるらしい
と言う訳で本格的な休憩をしましょうとリュックを降ろし、カメラを取り出してみる
時刻は4:50
前回よりもさらに低い位置になってしまったが、山頂でなければ同じようなもんだ
それよりも今年はこうして息を切らさず素直に御来光を楽しめてる自分を祝福したい
そして前回に引き続き、雨に悩まされることなく登っている幸運にも。
さて、一通り御来光の余韻を味わったことで息も完全に整った
疲労もほとんど感じていない
気を取り直して出発である
こりゃ、この調子なら前回より1時間早く着けそうだ
6時間ペース?
俺も成長したな
・・・しかしなのである
やはり、富士山をなめてもらってはいけないのである
いや、実のところ敗因は先の御来光休憩かもしれない
身体が冷えたのは、気化熱で汗から体温が奪われたのか、単純に標高が高くなったからなのか
フリースだけでは間に合わない
ダウンとレインコートを一気に着込む
もうフル装備である
それだけじゃない
出発してすぐ、息が乱れ出す
標高?
まさか高山病なんてことは・・・
いや、高山病ではない
前回の味わった感覚とは全然違う
それは大丈夫だ
でも、とにかくすぐ疲れてしまう
体力を温存したはずなのに、終盤のペースが思ったほど上がらないどころか、維持すら困難
ゆっくり歩いていてもとうとう立ち止まってしまうこともしばしば
岩山の段差がきついことも原因か
そもそもゆっくり歩けるような場所は少なく、足場見つけながら絶えず踏ん張って登っていかないといけないのだ
そんなことをしながらなんとか9合目の鳥居はくぐったが・・・
<9合目>
とうとう倒れた
三カ条3番目も破ってしまった
もう一度休憩
座るどころか、道端で大の字になる始末
もう寝てしまおうか。
なんかこうなってみると前回の方がバテてからの粘りがあったような
今年はここまで順調に来たのはいいが、一瞬にして動けなくなった
完敗だ
どうして「もう来ないと誓った前回の想い」を忘れてしまったのだろう
そんな後悔が今更にしてやってくる
だがもう遅い
こんな場所からじゃ既に後には引き返せないし、俺の性格上、引き返すわけもないのだ
10歩ごとに立ち止まる
30歩ごとに寝転がる
その横をおじいちゃん、おばあちゃんがひょいひょい登っていく
結局、このパターンか
うーー
まぁおそらくこの時間に登っている大方は山小屋で一泊している人が多いのだろう
それでもよたよた登るお年寄りの後に続いて追い越せない自分が情けない
山頂の鳥居が目前に見えても休憩をしてしまった自分が情けない
8:00
<山頂到着>
結局、今回も7時間かかってしまった
つうか、元祖室から3時間ってどんだけ大ブレーキかかってんだか・・・。
やっぱりダメダメな登山
今回も剣が峰にも行けず、本当の3776mを制覇出来ず
なんか、山頂で楽しい思いしたことない
景色だって・・・写真撮る元気なし!!
今度こそ忘れずに心に書きとめよう
「もう絶対富士山なんて登らない!!」
あれから、3日
・・・来年こそは・・・と思う自分もまたいるような気がしないでもない

