六〇日目


 バスは7時前にパムッカレのオトガルに到着した。すぐさまバスを降ろされ待機していたバンに押し込まれる。不思議なことにバンの中にいるのはアジア人ばかり。といっても日本人は私一人であとは半分ずつ中国人と韓国人。東アジア人は温泉が好きなのか。


 7時過ぎにホステル周辺に到着する。拠点となる場所なのか謎のショボいホテルの前で降ろされ「ここに泊まるやつはここで、それ以外は歩いて宿まで行ってや」という感じ。500メートル先のホステルに向かう途中で、旅行代理店の親父に声をかけられる。明日にはここを出てイズミルという街に行きたい。パムッカレは1日で飽きるとの前情報を手に入れている。便意も限界だし、ここでバスの予約するか。


 移動は基本的に夜行バスで宿代を節約したいのだが、パムッカレからイズミルは約180キロしか離れていない。出発時刻も16時~22時までのいずれかで四時間ほどで到着予定とのこと。宿も取らざるを得なくなる。切符は55TLで約1100円。高い気がしなくもないが大便させてもらえたので折れてやろう。


 7時半頃ホステルに到着。この旅行で鍛えた、申し訳なさそうな顔をしながらのアーリーチェックインを宿のおばちゃんに頼む。12時半~チェックイン可能とのことだったが快くゴーサインを出してくれた。


 愛想の良い宿のおばちゃん曰く「姉が日本に住んでるのよ。だから唐揚げも親子丼もつくれるのよ」


 トルコ人の、姉または兄が日本に住んでいるまたは自分が住んでいた率はほぼ100%だ。冗談抜きで、嘘かほんとかは別として。二親等以内に日本と関わりを持つ人物をターキーは必ずと言っていいほど持っている。簡単な日本の単語は知っている。日本人でトルコ語を喋れる人なんて一人もいないのに大したもんです。


 ホステルでシャワーを浴び10時頃周辺散策でもしようと外へ繰り出すときに下半身に何か水が溢れる感触を覚えた。自分でも気づかず失禁をしたのかそれとも出血?これはヤバい病気かもしれんと、驚くがそういうことではなく。鞄にしまっていた水が漏れていたのだ。


こういうゼリー型の容器の水をバスで配布されたのだが蓋のかましが甘かったのか二つとも爆発していた。とんだトラップに引っ掛かってしまった。中の物はほとんど無事だったが、モバイルバッテリーだけは水没した。今、確認してみるとやはり木偶の坊と化している。困った。

11時半頃昼飯、KARAGE定食。ホステルの横にあるレストランはどれもなんでか安い。これは14TL。セットは8TL約144円からある。価格崩壊だ。味は鬼のようにまずい。唐揚げはモモ肉を使えとあれほど言っているのにこいつはむね肉。味も素材の味しかしない。少なくとも日本の唐揚げではなかった。うまくはないが安さにつられ滞在中四度も通ってしまった。




理由は不明だがパムッカレという村には日本、中国、韓国料理屋が多い。というか、もはやそれしかない。なんでだ。


12時頃、山の頂上に位置するヒエラポリスという遺跡を目指す。


この石灰岩のテッペンを取りたい!が、直線では数百メートルなのにショートカットできず、右から迂回しておよそ四キロ歩く必要がある。

バスで10分。車は見えているのに右からぐるっと回る。バスの数リラすら惜しい。国道は誰も歩いていない。ちょうど半分ほど歩いたところで例のごとく便意EXが俺を襲う。さっきカバンがびしゃびしゃになったので乾かすために荷物は全て置いてきた。そのために普段持ち歩いているウェットティッシュの類いは存在しない。なんとしても漏糞を避けるべく全速力で坂を駆け上がりなんとか便所にたどり着いた。旅行中に幾度か漏らしているが、それでも漏らすことへの抵抗は拭えない。やはり漏らすよりは漏らさない方がいいのだ。


 13時頃石灰岩の上に到着。ここは自然公園になっていて古代ローマ人の遺跡やら温泉やら盛りだくさんの場所。特にテルマエはモノホンの遺跡が沈んでいるとのことで大人気の場所だ。さあ俺も入ってやるかと意気込むが、温泉入場ゲートに並ぶが入浴料は50リラ、約900円。ダメだ。お金に余裕がないのにこんなとこで使っちゃダメだ。そもそも混浴で水着マストなのに水着を持っていない。ということで入浴は断念し欧米人が温水プールで戯れているのをひたすら眺める謎のプレイに興じた。


 太った欧米人とかシワシワのおばあちゃんがまあまあ際どくて派手な水着を堂々と着ているのはすごいと思う。なんかそこまでしてって感じで日本人なら考えられない光景ではないだろうか。


15時頃までこの自然公園内を散策。



丘を登りきったところにあるけど、水が約260円で売られていた。下では20円未満で買えるのに。喉の乾きに我慢ならず購入。


雪のように白い岩、なんだか夢でも見ているような気分になる。遠くに見える建物たちもきれいだ


 15時半頃、帰ってケバブとビールでもかまそうかとケバブ屋に入ったところで携帯がないことに気づく。終了の詔の発布を予感した。ポケットをひっくり返してもないので、どこかに落とした模様。記憶を辿ると10分前に座っていた公園内のベンチに置き忘れた可能性が高い。走って公園に戻ると受付のところに届いていた。トルコじゃなきゃ普通に戻ってこんかったやろな..。命拾い。

 16時頃、ケバブとビールを部屋に帰ってかます。初めてまずいケバブを食べた。具がなぜか酸っぱくて、巻いてある生地にモチモチ感がなく紙のようにペラペラ。店の親父が「俺の店は日本人に大人気だ」と抜かしていたからつられてテイクアウトを購入したが、300円くらいとお高いしまずい。エフェスビールは相変わらずうまい。


 部屋でのんびりしているとルームメイトが帰ってきた。朝は気づかなかったけど、この人は日本人だった。トルコでの悲惨なぼったくりの話をすると、明日風呂に行くから奢るよって..。やっぱ異国でも信頼できるのは同胞だ。


夜のお岩さん、色が変化するのもきれいです。



六一日目


 10時頃に起床。13時間くらい寝た。こんなに寝るのは久しぶりだ。


スーパーで朝飯のバケットと桃のジュースを購入。内訳は不明だが、二つ合わせておよそ90円。もう物価がわからない。


 11時半頃に日本人男性Tさんと合流し再びテッペンを目指す。上で水着も売っているみたいだが高そうなので下で物色。商店的なとこで約360円で購入。店のおばはんが「上で着替えるとこないからここで着替えていきな」と言うので店の中で着替える。もちろん、フィッティングルームはないのでお菓子とか陳列されてる場所で下半身を晒す。貴重な経験だ。着替え終わったところで「ユーアースモールオアビッグ?アイルック」とカタコトの英語で突然ぽこちんを触ってきた。ババアまじかこいつ。「あんた小さいわね」って捨て台詞。クソババアまじで許せな。触られ損や。ちなみにテッペンにも更衣室はあった。ほんまになんやねん。

 13時前登ってテルマエへ。水温はおよそ30度、のぼせることのないぬるい温度。水質は炭酸。二時間半ほどここにいたけれど、ほぼほぼ二人とも寝ていた。

作品名『人生の勝者』


 16時頃退散。Tさんと晩飯を食ってお別れ。最初に会ったときなぜか大学名を当てられたのでもしかしたらブログを読んでくれているのかもと思った。怖くて聞けなかったけど..。色々とありがとうございました。


 17時半頃に代理店の前に到着しバンに詰め込まれ18時前にはパムッカレのバスターミナルに着いた。このオトガルの構造がよくわからず降ろされた場所で待機しているが集合時刻を過ぎてもやってこない。周りにいるドライバーに聞いたらお前のバスは二階だよって。あわてて上に走って着いたのが18時2分、出発時刻から2分ほど遅れている。大丈夫やろとベンチに座ってヤニをかましていたが18時15分のバスも時間ちょうどに出発している。普通に置いていかれたくさい。そうこうしているうちに18時半のイズミル行きの同じ会社のバスがやって来た。俺はここにしれっと乗り込む。バスが出発してからチケット確認がされるのだがチケットを渡したタイミングで何やらスタッフ同士での相談が始まる。ここにいるはずのない人間がいるからだ。怪訝な顔をされながらも、なんやかんやで席だけ移動させられてつまみ出されるなどということはなかった。なんとかなるもんだ。


 21時前に国道の真ん中で車が停車。イスタンブール→カッパドキア間でもあった軍隊?による身分確認。これなんやねん。パスポートで対応。事なきを得る。

 22時半頃ににイズミルオトガルに到着。さっさとゲストハウス行って風呂入って寝たるかと思いながら地図を確認するとオトガルから500メートルのとこに宿があるという自分の予想とは裏腹に8.1キロも離れている。Googleによれば徒歩だと1時間40分はかかるよう。タクシーに金を落とすのは痛い。ゲストハウスからのメールを見ると24時以降のレイトチェックインには約500円の特別料金が発生するとのこと。何としても1時間半以内に到着しなければならない。やってやる!走ってやる!


めっちゃ煽ってくる..


 夜のイズミルの街はぼちぼち明るくお店も結構やっている。治安の悪さは感じない。が、Googleの言う通りに大通りから一本路地を入って住宅街に入ると明かり一つない暗闇へと変貌した。

 23時半頃、この真っ暗な路地で警察を名乗る男たち五人組に囲まれる。「トルコの警察はマジでやべえから気を付けろ」と誰かが言っていた気がする。だが、こいつが見せてきたライセンスと手に持っているトランシーバーはほんとに本物なのか?判別はつかない。全員私服だしおかしいぞ。「危なくなったら走れ!」と友人のピラフに言われて日本を送り出された。俺はフォレスト=ガンプよろしく、この五人の間を掻い潜って逃げ出した。小さな身体が有利に働くこともあると証明してやった。逃走むなしく十秒後には無事捕獲されたが。「あー、これほんまのヤバいやつか?」とヒヤヒヤする。パスポートの提示を求められ身分確認をサクッとされたあと「ここはデンジャラスストリートだ。大通りを歩け」とのお達し。モノホンの優しい警察だった。ベトナムでもそうだったけど警察がヒヤヒヤさせて来る。マジモンとダミーの見分け方がわからない。ほんまにヤバいときにヤバいと思わなくならないよう、やっぱ今くらいの警戒がちょうどええんか。


 無事、24時を過ぎず無事にゲストハウスに到着。イズミルはイスタンブールで会った旅人に勧められた場所だ。何もないけれど良い場所だと。まったり楽しみたい。


続く