旧ルールでは、「しみる」で、「染まる」と混同して困るみたいな内容で記事にしました。それが、今回の改訂で、「染まる」との書き分けは必要なくなりました。
その代わりに、前の記事にちょっと書きましたが、「シみる」自体がほかの漢字との書き分けが必要になってしまったのです。そしてこれが非常に面倒くさい感じなんですよ。
というのが、辞書を見てみますと、「シみる」は日本語としては、この「染」のほかに「凍」「沁」「浸」「滲」などの漢字で書けるようで、「凍」のほかは一緒くたの項目になっていて特に区別が記載されているわけではないのですが、用字用例辞典では、「染」が漢字で、そのほかの「沁」「浸」等の場合は平仮名表記である旨記載がされているからです。
つまりは、日本語としては書き分けなくてもいいものを用字用例辞典では書き分ける必要が出てきたという……。
まあ今回の改訂はこういうものが圧倒的に多くて私の愚痴は止まらないわけですが、そうはいってもルールはルールなので、表記の分け方を自分で分かるようにしなければなりません。
というわけでデジタル大辞泉と用字用例辞典とを比較してみましょう。
辞書の意味を引用すると、
1 液体や気体が他の物に移りついて、次第に深く広がる。また、にじんで汚れる。しむ。「味が―・みる」「匂いが―・みる」「汗の―・みた下着」
2 液体や気体などの刺激を受けて痛みを感じる。しむ。「消毒薬が傷口に―・みる」「歯に―・みる」
3 心にしみじみと感じる。しむ。「親切が身に―・みる」
4 好ましくない気風の影響を受けて、その傾向をもつようになる。そまる。しむ。「悪習に―・みる」
です。
そして、用字用例辞典の「染みる」の用例は「色が染みる」、「しみる」の用例は「傷・水・目-がしみる」「身・目-にしみる」「しみ豆腐」です。そのほかに「染みつく」「しみつく」という項目もありまして、用例はそれぞれ「染みつく」は「汚れが染みつく」、「しみつく」は「貧乏性がしみつく」です。
これを見ると、明らかに辞書の1の「液体や気体が他の物に移りついて、次第に深く広がる。また、にじんで汚れる。しむ」のみが用字用例辞典では「染みる」と表記すべきものであると言えるでしょう。
こう整理すると、何となく一般的にもそのような表記をされていることが多いような気がします。
なお、用字用例辞典の用例にある「しみ豆腐」は、漢字で書くとすると「凍」を用います。要は豆腐を凍らせて作る高野豆腐のことで、味が染みた豆腐ではないので御参考までに。