旧ルールのときに、「跳ぶ」は漢字だが「はねる」は平仮名という記事を書きましたが、このたびの改訂で「跳ねる」も漢字表記になりました。そして、その記事の最後で触れておりました、日本語としては「刎」「撥」で表記できるときは新訂でも平仮名表記のままですので、結果として動詞「ハねる」は表記を分けることになりました。
個人的に「跳ねる」はついつい漢字表記してしまう言葉だったので、やりやすくなったと言えなくもないですが、「刎」のほうの「はねる」はよいとして、「撥」のほうは「跳ねる」と同語源でありますから、結構注意が必要です。
個人的に特に間違いやすいなと思うのは、「跳ねる」の「芝居などで、その日の興行が終わる。芝居小屋の外囲いの蓆 (むしろ) を上の方へはね上げたところからいう」(デジタル大辞泉より)の意味のとき、用字用例辞典の用例では「芝居が跳ねる」ですが、「撥」を用いるほうは何も考えずに変換すると高頻度で間違ってしまう気がします。
デジタル大辞泉より「撥ねる」の項の意味を引用しますと、
1 とばし散らす。液体などをはじきとばす。「泥を―・ねる」「ワックスが水を―・ねる」
2 物や人をはじきとばす。「歩行者を車で―・ねる」
3 一定の基準に満たないものを選んで取り除く。検査などで不合格にする。「腐ったものを―・ねる」「面接試験で―・ねられる」
4 人の取り分の一部をかすめ取る。「もうけの上前を―・ねる」
5 拒絶する。断る。はねつける。「要求を―・ねる」
6 物の端を勢いよく上に向ける。文字の線などの先端を払い上げるようにする。「ぴんと―・ねた口ひげ」「筆順の最後に縦の棒を下ろして―・ねる」
7 撥音 (はつおん) で言う。撥音になる。「『摘みて』は『つんで』と―・ねる」
どれもこれもアレですが、1の「泥をはねる」は特に微妙ですよね。「とばし散らす。液体などをはじきとばす」ときは「はねる」ですが、辞書の「跳ねる」の項にありますように「液体などがはじけてとび散る」(デジタル大辞泉より)とき、つまり「油が跳ねる」は「跳ねる」なわけです。
このほかに、用字用例辞典に載っている複合語で、「はね返す」(用例:重圧をはね返す)、「はねつける」(用例:提案をはねつける)、「はね飛ばす」(用例:石・重圧-をはね飛ばす)、「はねのける」(用例:布団・プレッシャー-をはねのける)なんかは大変危険な気がします。これらは全部「跳」で表記してしまいそうで怖いです。