辞書ではどの意味でも「解ける」で記載できるように書かれていますけれども、用字用例辞典では書き分けしなければならず、そして、これまで出てきたこのパターンのものの中ではちょっと複雑な書き分けが必要なものであります。
まず用字用例辞典を見ますと、例示だけがされており、「溶ける」は「火で・水に-溶ける」、「解ける」は「氷・霜・謎・責任・怒り・恨み・ひも-が解ける」「雪解け」とあります。
つまり、水に何かが拡散する場合は「溶ける」で、氷そのものは「解ける」なわけです。これだけだとちょっとわかりづらいですね。
そこでいつものように辞書を見てみますと、まず、「解ける」の項と「溶ける/解ける/融ける」の項に分かれています。
それぞれの意味を見てみますと、まず「解ける」は、「結んであったものが、自然とはなれたりゆるんだりする。ほどける」「束縛から解放されて自由になる。命令や規制などが解除される」「心のわだかまり、不快に思う気持ちなどが消えてなくなる」「心のへだたりがなくなる。うちとける」「わからなかったところがはっきりする。答えが得られる」とあり、「溶ける(以下略)」のほうは、「固体が、熱や薬品などによって、液状になる」「ある物質が液体の中に平均にまじって、液体と一体になる」とあります。(意味は全てデジタル大辞泉より)
辞書で「解ける」のほうは、用字用例辞典の「解ける」と等しいのがわかりますが、ここで問題なのは後者の「溶ける(以下略)」のほうです。
ただ、その二つ目の「ある物質が液体の中に平均にまじって、液体と一体になる」は問題ないでしょう。用字用例辞典の例「水に溶ける」と一致しています。
その一つ目の意味の「固体が、熱や薬品などによって、液状になる」の例には、「氷がトけた」と「熱でアスファルトがトけた」が挙げられております。それらの表記は、用字用例辞典のルールでは、「アスファルト」のほうは「熱で」とあるので、用字用例辞典の例の「火で溶けた」と同じく「溶けた」でよいと思われますが、もう一つの「氷」のほうは、用字用例辞典では「解けた」の表記の例として挙げられています。そのほか、「霜」「雪」も同様です。
これらのことから考えると、つまりは、固体が液状になる場合の用字用例辞典の表記は、それが水になるときは「解ける」、それ以外のものは「溶ける」であると言えるでしょう。
本当に難しいですね……。注意が必要です。