これと同音の「決壊」は、よく聞く言葉かと思います。念のために記載しますと、「堤防などが切れて崩れること」(デジタル大辞泉より)です。「ダムが決壊した」「堤防が決壊」したなど、これからしばらく後の梅雨、その後の台風シーズンになると、あってほしくはないのですがそういうニュースを耳にすることがふえてきます。
対して「欠壊」のほうはといいますと、余りというかほとんど耳にすることのない言葉ではないかと思います。少なくとも、私のいつも使っているデジタル大辞泉には項目がありません。
ネットで検索しますと、国土交通省の洪水等に関する防災用語改善検討会の平成18年4月27日の第3回の資料に、「堤防が激しい川の流れや波浪などで削り取られたり、雨の浸透により堤防の一部が崩れること」とありました。要は「堤防が壊れているけれども、決壊までは至っていない状態」ですね。
確かに漢字が「切れる」という意味のある「決」ではなくて「欠ける」の「欠」なので、「欠壊」も字面どおりの意味ではありますが、発音は「決壊」と全く同じ、意味もかなり似ているということで、私はこの言葉を知る前に資料に「欠壊」と記載があったのを見て、一瞬、以前記事にした「自後」と同様に誤植かと思いました。まあ「自後」の教訓を生かしてネット検索したら上記の資料がヒットしたわけでありますが。
こう勘違いするのはどうも私だけではないようで、上記の洪水等に関する防災用語改善検討会の資料によりますと、「決壊と欠壊は混同するおそれがあるため、危険度が低い欠壊は今後用いず、多少意味が異なる可能性はあるが、一般的な用語に言いかえ、対象を明確にして使用する」とあり、さらにその後出された洪水等に関する防災情報体系のあり方についての提言でも、洪水警報等で用いる言葉のうち改善すべき言葉、言いかえるべき言葉として挙げられております。
というわけで、「欠壊」は一般的には余り使われることのなくなっている言葉ではないかと思いますが、たまに使われることもありますので、「決壊」としたら何か意味がおかしいような気がしたときには、この「欠壊」という言葉もあるということを思い出してみてください。