「引き上げる」 or 「引き揚げる」 | ある在宅ワーカーのつぶやき

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みそっかす反訳者が、用字用例辞典(日本速記協会)の表記ルールにおける個人的な解釈についての記事を書いています。2020年4月半ばから新訂対応です。たまにテープ起こしについてのそのほかの話も。文中で引用している辞書はこちら→https://dictionary.goo.ne.jp/jn/

ずっと前に「上げる」「揚げる」の使い分けについて触れました。

「上げる」が一般的で、「揚げる」の場合が「てんぷらを揚げる」「荷揚げ」など限定的ということでしたが、これに「引き」がつくとまたちょっと事情が変わってまいります。

 

用字用例辞典を調べますと、引き揚げのほうは「撤退、回収、退去」とあります。

一緒に例を記載しますと、「委員を引き揚げる」「沈船を引き揚げる」「東京の家を引き揚げる」です。

「揚げる」の使い分けからすると、「沈船を引き揚げる」は納得なんですが、ほかはちょっと微妙なので、辞書の意味から考えてみます。

 

デジタル大辞泉では、漢字は「引き上げ」「引き揚げ」の両方で表記できるように記載されており、書き分けが必要であるようには書かれていません。

意味は以下のとおりです。

 

1  引っ張って上方へ上げる。

2  値段・比率・水準などを高くする。

3  選んでよい地位や役につける。登用する。

4  差し向けた人や、先方へ出した物などを、自分の所へ戻す。

5  その場所を去ってもとの所へ戻る。

6  日時を早める。時間を繰り上げる。

 

4、5が、用字用例辞典でいう「撤退」あるいは「退去」のようですね。

また、1のうちの「沈没船を引き揚げる」のように「回収する」の意味のときは、「引き揚げる」のほうでよい気がします。

「上げる」「揚げる」だと圧倒的に「上げる」の出現頻度が高いんですが、「引き上げる」「引き揚げる」になると「引き揚げる」の出現頻度もそこそこ高いので、間違いそうになってしまいますから注意が必要です。

 

なお、「引き揚げる」は用字用例辞典に例外表記が記載されており、「引揚者」だけは送り仮名が要りません。