「移殖」 | ある在宅ワーカーのつぶやき

ある在宅ワーカーのつぶやき

みそっかす反訳者が、用字用例辞典(日本速記協会)の表記ルールにおける個人的な解釈についての記事を書いています。2020年4月半ばから新訂対応です。たまにテープ起こしについてのそのほかの話も。文中で引用している辞書はこちら→https://dictionary.goo.ne.jp/jn/

あるとき、漁業に関する仕事をしておりまして、その中で「その場所にアサリ種苗をイショクして」という発言がありました。
移植というと、私の頭に浮かぶのはまず「移植」、その次に「衣食」、さらに「委嘱」ぐらいですが、ここですと「よそから持ってくる」という意味も含まれるものですから、「移植」が妥当なような気もいたします。
しかしながら、ここでふと、「植える」を動物に使うことに対する違和感を覚えました。

辞書を調べてみましても、「移植」の意味には、「植物を他の場所に移し植えること。植えかえ」「外国の文物・制度などを自国に取り入れること」「生物体のある器官や組織の一部を切り取って、同一個体の別の場所または別の個体に移しかえること」「コンピューターで、ある特定の機種で動くプログラムを、他の機種でも動くように変更すること」(デジタル大辞泉)とあり、動物に対して使える感じではありません。

ただ、ネットで検索してみたところ、「アサリ 移植」で、公的な書類や論文等含め7万弱のページがヒットします。
でも意味がなあとしばらく悩んだところで、だめもとで用字用例辞典を開いてみたところ、ありました。

「移殖(水産、養殖) 移しふやす」

どう考えてもこれが正解です。
確認のため「アサリ 移殖」で検索すると、1,300余りのページがヒットしました。グーグルにまで「「アサリ 移植」ではないですか?」と間違い扱いされてしまいましたし、公的な文書等でも間違って使っている方のほうが圧倒的に多い模様です。

悩み始めてからここにたどり着くまで約30分。専門的な用語なんかは通常の辞書に載っていないことが多いですし、とりあえず用字用例辞典を引いてみることが大事だなあと思わされた出来事でした。