本当にご無沙汰しております。
古面修復が続く中、最近制作した面は増女。
小面の次にたくさん打った面です。
しかしなかなか決定打は出ません、当たり前ですが。
本面を直に洞水が写した面(万三郎先生ご所蔵)の裏に「本面喜多七太夫家ニアリ」とあるのでかつては喜多家のが所蔵だったのですね。
これが本面の写真。
この面の写真が掲載されている本は中村保雄先生著の一冊しか知りません。
紛れもない室町時代の作品だそうで、深い表情をしていることがよくわかります。
「泣増」といわれる面のように女性らしさを抑えてひたすらに厳しいわけでも、艶かしさを強調したわけでもなく、全てを内包しているように感じられます。
これが本面の凄みでしょうか、般若坊打ちの般若も白般若、赤般若など相反する要素が共存しているような印象でした。
こちらは洞水打の写し
お舞台で拝見しても実に美しい見事な面ですが、本面の空気感、匂い?とは違うようです。
左右非対称なのは言わずもがな。
照明の具合なのか、鼻梁は信じ難いほどに歪んでみえます。
洞水作の写しは何度か手に取らせて頂きましたがこのような歪みはありません。名工といえど写し切れていないのかもしれませんが。。
眉間の作りは、向かって右に憂いが現れるような工夫があるようにも見えます。
また、本面を撮影し直に手に取られた見市泰男先生が打たれた写しは写真を沢山撮らせて頂き参考にさせて頂きました。
公開されている写真は少なく、現存するようですが、能のお家のご所蔵ではないようなので、お舞台で拝見できる機会もなし…
堀先生が写された裏に順慶と銘があるという小面(真の金春本面?)と共に棺桶に入るまでに一度は手に取りたい幻の面です。
2月には大分県宇佐市の宇佐神宮様へ東博の浅見先生、早稲田大学の川瀬先生、東博の川岸先生と能面科研調査に伺いました。
上記はネットに公開されている戦前?の絵葉書です。
この面以外に沢山ありましたし、この絵葉書にはあるのに現在無いものもありました。
上段左から2面目の若女?は見覚えがありません。
不自然に焼印が潰された北○○意作の若女のような創作面があり、すり替え?などと考えましたが…
面打ご自身ではなく第三者の手によってなされたと思いたい。
中には塗り替えされて雰囲気が変わっているものも。。。
流石に名品もありました。
その中から2面だけご紹介します。
パッと目を引く秀逸な面は姥。(中段左から3面目)
様式化された姥とは異なりリアリティのある柔らかな皮膚、皺の表現が素晴らしく、
それでいて能面としての品格を保ち彫刻としての存在感に溢れていました。
浅見龍介先生がご推薦の一面。
よく見かける江戸時代の写し面とはまるで違う唯一無二の貴重なもの、姥の中でも一二を争う逸品だと思われます。
その次は狂言面の狐。
太閤秀吉拝領という墨書張り紙のある面箱に収まっていました。その真贋はともかく江戸初期は降らなそうな鋭い彫刻。
目はシカミのような半眼で、今にも食いつかれそうで兎に角怖い。
狼のようでもあり、人間への恨み怒りを感じされるような強い面でした。
これは一般に写真は出ていないようです。
しかしどちらも彩色層が剥離剥落し、非常に傷んでいました。
他にも怪士と小飛出の合いの子のような面、二十余と呼べそうな若く線の細い痩男、大癋見、笑尉、骨の良い乙など…目を引きました。
USA表記は有名ですが、某国の国旗に似せたデザイン色合いなのは驚きました。
八幡宮の総本社。
朱塗の社殿が眩しいとはこのことでしょう。
身の引き締まる思いで参拝させて頂きました。
門前の食堂、グルメの先生がリサーチされたお店。
どれも美味しかったです。