ロングボーダーの憂鬱。 | タパスオキのブログ

ロングボーダーの憂鬱。

さてさて、

海の遥かむこうのほうから
吹いてくる風が
海水が濡らした髪を乾かした。

ゆっくりと
色付きはじめた夕陽が
なぜだか少しだけ
感傷的な気持ちにさせた。

その昔、
休みのたびに
車の屋根にサーフボードを結びつけ

乗り合わせた仲間達の
誰かの下らない話に
腹を抱えては

真夜中の高速道路を
南へと下った。

その頃の僕等は、
眠気を感じることさえなかった。


20代の頃は、
真夏の太陽を体中に浴びて
波に乗り
仲間と冗談を言って、
一日が終わる。

それだけでよかった。

ただ、
そんな人生が
いつまでも続く訳もなく


いつからだろう。


沖合いで隣を見渡しても
セットを待つラインナップは
いつのまにか
知らない顔ばかりになっている。


仲間達は

就職、転勤、結婚、出産。

色々な人生の波を
上手く乗り継いでは
みんな浜へと
上がっていってしまった。

昔から、

『次、いい波に乗れたら
 海からあがろう。』

そう思って
いざ、
テイクオフしたとしても

その独特の浮遊感と
解き放たれる感覚に
心を奪われてしまって

波の終わったあとには
何の迷いもなく

すぐさま
ノーズを沖へと返して
パドルをはじめていた。

夕陽が
あと少しで沈もうとしている。

僕も、
もうそろそろ
家路につくころかもしれない。


『次、いい波に乗れたら
 海からあがろう。』


水平線が
ゆっくりとふくらんで
うねりとなり

うねりがまとまって
波となって

その波に
夕陽が影を落とした。


僕は、
ボードを反転させて

自分の決めた
最後の波に乗るために
力を込めて
海水を漕ぎはじめる。