というわけで
作業終了の翌日、プレート工場の塗り替えをした囚人チームは、午前10時、
車折になって腰を下ろし、冷えたビールを飲む事になった。
ショーシャンク刑務所始まって依頼といわれる鬼看守のおもてなしだ。

威張りくさってる鬼看守が猫撫で声まで出して…。
太陽を浴びてビールを飲む。まるで自由な人間だ。
屋根を塗ったのだって、自分達の家だと言えないこともない。
まったく言う事ナシだった。

アンディーはといえば、一人離れしゃがみ込んで、奇妙な笑いを浮かべながら、俺達がビールを飲むのを見ていた。

彼の目的は、看守の機嫌を取ることだったかもしれない。あるいは、俺達と友達になりたかったのかも。
俺は、つかの間でも彼は普通の人間の気分を、味わいたかったからだと思う。



俺は若い頃、ハーモニカをよく吹いた。今は入所してから興味を失った。

『心の豊かさを失っちゃダメだ』
忘れない為に必要だ。

どうしてって
人間の心は、石でできてるわけじゃないんだ。
心の中には何かがある。誰にも奪えないある物が…。
君の心にも。

一体、何だ?

『希望』だよ。



所長が死んで間もなく、俺の元に一通の絵葉書が届いた。
何も書いてなく、消印は テキサス州フォートハンコックだった。メキシコ国境の町だ。アンディーはここで国境を越えたんだ。
オープンカーを運転して南に向かうアンディーを想像すると、俺はいつも笑ってしまう。
アンディー・ディフレーン。
排水の川を這いずって、向こう側に出た時はバリっとした姿で、そして太平洋に向かった男。
アンディー・ディフレーン。

俺達の仲間はよくアンディーの話をした。いろんな逸話があった。
でも時々、寂しくなる。 アンディーはもういない。
俺は自分に言い聞かせる。カゴに閉じ込めちゃいけない鳥もいるんだと。
『彼は 自由に飛ぶべき鳥だったんだ』
羽があまりに美しすぎる。それが飛び去った時、
自由になってよかったと、喜ばなきゃいけないんだと。とはいっても、
鳥が飛び去った後の世界はくすんで侘しい。
ようするに俺は、アンディーに会いたかった。



「レッド、これを呼んでるなら君は出られたんだ。
ここまで来たんならもうちょっと遠くへ来ないか?町の名前は覚えてるね? 僕の計画を実現させるために手を貸してほしい。
君が来るのを待ってる。
チェス盤を用意して。
覚えてるね?
『希望は素晴らしい。』
多分最高のものだ。
『希望は永遠の命だ』
君が、この手紙を見つけてくれることを、そして元気でいることを願っている。
アンディーより。」



頑張って生きるか、
頑張って死ぬかだ。

その通りだ

『俺は生きるぞ』



興奮する。
ワクワクしてとてもじっと座っていられない程だ。
自由な人間だけが味わえる興奮だ。
『自由な人間の喜びだ』
何にも縛られず、長め旅に出る自由な人間も。
この長旅の結末はまだ分からない


無事、国境を通過できるといい。

友達と会って握手できるといい。
太平洋が夢で見たのと同じに、青く見えるといい…。
俺の希望だ。
『希望を持とう』


その300万で、俺の言う通り東大目指せ。

俺の人生は
そんな安くねぇんだよ!

いや、安いねぇ。
お前の人生なんてなぁ、
まだ1円の価値もねぇ!

この野郎…!


はー矢島ぁ、
これがお前の最後のチャンスだ。決断しろ。
俺に買われて、東大に行くのか、

そうやって金ですれば
誰でも言う事聞くと思ってんのか!

それともこのまま借金に追われて社会の底辺はいつくばっていくのか!
矢島ぁ、
受験っていうのはな
今の日本に残されたたった一つの平等なんだぞ。
家が貧乏でも、
グレて不良やってる時期があっても、
父親がクソでも、
受験で点数さえ取れりゃあなぁ、一流大学に入れるんだ。
近所のガキに悪い影響があるから、どうか引越して下さいって町内会長に土下座されるようなバカな奴でも、
受験で点数さえ取れりゃな、
一流大学に入れる。
人生やり直す事ができるんだ!

さぁどうする!

決断の遅い奴はそれだけチャンスを逃す。
5秒毎に一枚減らすぞ。


ちょっと待てっつってんだよ!

止めんのか?
金になんか転ばない男なんじゃないのか?だからこの金も突き返すんじゃないのか?
だったらこの金がどこに消えようが、
お前の知ったこっちゃないんじゃないのか?

汚ねえぞ。

そしてお前は、
1円にもならねぇプライドを抱えて、毎日毎日、借金を返す為だけに働き続ける。ピンハネされた給料で、借金の金利を返すだけで精一杯、
元金は一向に減りやしない。

やり方が汚ねえぞ
「5」!


悔しいだろ矢島、惨めだなぁ矢島、
だがな矢島、
これが一生続くお前の
現実ってやつだ。

このままお前が、
変わろうとしないならな。


明日の朝5時、
龍山高校のグランドに来い。

金はもらわねぇよ、
ぜってー返す!

こいつはオマケだ。
矢島ぁ、喧嘩に勝つ方法知ってるか?

「まずは自分の弱さを知る事だ。」



知ってるか、
役所の規定では公共事業の工事において
人件費は一人あたり
日給1万4000円だ。しかしお前の日給は8300円、
じゃあ差額の5700円はどこに消えたんだ?

知らねぇよ、
つかどうでもいいし。

これが「搾取」ってやつだよ。
人は誰かに使われている限り、この搾取の迷宮から逃れられないんだ。
俺は今日ここで働いて、それを身をもって体感している。いやぁ、実にいい経験だ。
じゃあどうやったら
お前の人生は浮上するのか、、
答えは非常に簡単かつ明解だ。
東大東大…、東大!
特進クラスに入る気なったかい?

全然。

頑固な奴だ。
これ後で返しておいてくれ。

おい何処行くんだよ?

あ?家に帰るんだよ。
俺はお前と違って、借金に追われてないからな。
こうやって辞めたくなったら
いつでも辞められんのさ。へーやれやれ。