ルオー展 | 珍獣

珍獣

うちんちのちんじゅう達

いわきでルオー展がやっていた。

 

都合がついたので、ちょっと遠いが行ってきた。

 

ルオーは小林秀雄が好きな画家で、その影響で画集やあちこちの常設展で数点をみていたが、まとまって作品を見ることはなかった。

 

今回の展示では初期から後期の作品を一同に見ることができた。初期はどの作家でもそうだが重々しい油絵が並んでいてすこし暗い気持ちになった。

ルオーの特徴の極太の輪郭の人物画は比較的初期から描かれており、ミセレーレの版画はどれもよかった。

特に「ミセレーレ」15(清らかだった唇に、苦い味)の少女の絵には心奪われた。

 

人物のいる風景というタイトルの絵も数点あったが、シンプルな構図で、目鼻のない人物が描かれていて、熊谷守一の絵のようだった。

最晩年のマドレーヌ(展示会のポスターに使われている絵)はミセレーレとは一転、色彩豊かで、ルオー老人がたどりついた境地を感じた。 

 

家に帰り小林秀雄の文章をみると

同じ頃の「ピエロの顔」についてこんな記述があった

 

「叩きつけられた絵具が作る斑点と、顔料を分厚く盛り上げて引かれる描線との対照は、いかにも荒々しく烈しいものだが、其処に、極めて繊細な和音が発生し、皿全体が鳴るのに気付いて驚く。これに聞き入っていると、こういう美しい物が生まれて来る、創り出されて来る、その源泉ともいうべきものに向かって誘われていくような、一種の感覚を覚えるのである」

小林秀雄 「ルオーの事」

 

芸術作品に触れたときの、言葉に表せないなんともいえない感情を小林秀雄は見事に文章にしてくれる。