むかしむかし、庭の片隅で毎朝せっせと巣を張るアリスという名の働き者の雌グモがいました。彼女は自分の描く幾何学のように整った巣を、とても誇りにしていました。

 

ある日の午後、うっかり者の小鳥がふわりと舞い降りてきて、アリスの見事な巣をばさばさと引き裂いてしまいました。アリスはお腹をすかせ、力なく地面に座り込みました。

 

シダの陰で、その様子をやさしく見守っていた年寄りのヒキガエル、ブランブルがゆっくりと喉を鳴らしました。

 

「小鳥が糸を奪ったのだね。でも君は、その空いたところに何がやって来るか、まだ見えていないね」とブランブルは穏やかに言いました。

 

翌朝、アリスは新しい巣をまた張りました。今度は高い場所をやめ、湿った地面の近くに低く結い直しました。そこで彼女はのろのろ歩くぷっくりしたコガネムシを捕まえ、先ほどの不運を思わぬ幸運だと喜びました。

 

しかし朝露が重く地面を濡らすと、アリスは自分の粘った糸に絡まれてしまい、溢れる水に沈みそうになります。必死にもがくうちに、庭が自分を滅ぼすために作られた罠のように思えてきました。

 

「露が君を縛るが、それは同時に、君自身では壊せなかった古くてもろい網を洗い流してくれるのだ」とブランブルは静かに告げました。

 

やがて太陽が昇り、露を蒸発させると、アリスは古い網から解かれ、新しく強い糸の上に休んでいる自分に気づきました。

 

「千切れるのを悲しむな、得を喜びすぎるな。風にも水にも従うことを知ってこそ、巣は強くなるのさ」とヒキガエルは言いました。

 

それからアリスは執着せずに巣を紡ぐことを覚え、切れた糸はより強い巣の始まりにすぎないと悟ったのでした。