ある農夫は40年間、同じ畑を耕し続けてきた。父も祖父も、その前は父が耕していた畑は、農夫のアイデンティティであり、遺産であり、故郷だった。
ある年、洪水が襲った。川は増水し、水は押し寄せ、農夫の畑は流されてしまった。翌朝、そこには泥と石だけが残っていた。
農夫は川岸に座り込み、泣き崩れた。「すべてを失ってしまった」と彼は言った。「畑がなくなってしまった。家業もなくなってしまった。私は役立たずだ。生きていてもしょうがない。」
通りかかった旅人が農夫の悲しみに気づいた。「何を失ったのですか?」と彼女は尋ねた。
「畑だ」と農夫は言った。「40年間耕してきた畑だ。私の人生そのものだった。」旅人は川と、泥と石を見つめた。
「畑がなくなってしまったのですね」と彼女は言った。 「でも、あなたはまだここにいます。あなたの手はまだ動いています。あなたの心臓もまだ鼓動しています。なぜあなたは自分の手を悼まないのですか?あなたの手はどんな畑よりも尊いのです。」
農夫は理解できなかった。「畑がなければ、私の手は何の意味もありません。」旅人は静かに首を横に振った。
「あなたの手がすべてです」と彼女は言った。「新しい畑を耕すこともできます。新しい家を建てることもできます。子供を抱き上げることもできます。畑はただ、あなたの手が働く場所だっただけです。手そのものが贈り物なのです。」
農夫はそれをじっと見つめた。自分の手を。ごつごつとして、たこができ、力強い。彼は40年間畑の手入れをしてきたが、一度も自分の手に感謝したことがなかった。
彼は石を取り除き、泥を耕し、新しい種を蒔くための準備をし始めた。彼の手はこれまでと同じように働いたが、今、彼はその手を意識した。その力強さ、その技術、そして静かな奇跡を。
新しい畑ができた。それは以前の畑と同じではなかったが、良い畑だった。そして農夫は感謝の気持ちで耕した。土地そのものに対してではなく、土地を豊かにする自分の手に対して。
数年後、若い農夫たちが彼に心の平安の秘訣を尋ねると、彼は両手を見せてこう言った。「これだよ。畑は移り変わる。だが、手は残る。自分の手を愛しなさい。手こそが真の畑なのだから。」