たおです。

 

今日はてん(妻)との出会いを綴っていこうと思います。

 

てんとは今(2020/11/08)から4年前の初冬に出会いました。

 

てんとの出会いの場

今でこそコロナの影響で外出を控える世情になりましたが、4年前は月に2度ほど気になった喫茶店やカフェへ直接赴いて、コーヒーを飲みながら読書に耽るのが私の日課になっていました。


読書っていいですよね。

 

先人や著名な方の経験や知識、思考や創造性を感じることが出来るので雑念の整理や、その時に直面した問題解決のヒントを得る目的でコツコツ読んでいます。

 

ある週末に本を一冊鞄に携えながら、しんしんと降る雪の中を散策をしていたら喫茶店の小さな看板を見つけました。

 

看板はあるものの肝心のお店が見当たらない。

 

ウロウロしていると看板が出ている建物の裏手に、古民家をリフォームした木造の喫茶店があるのを見つけました。

 

「えっここ?家?」

 

と恐る恐る引戸を引いて中に入ったのを今でも覚えています。

 

外観は壁に茶色の蔦がびっしり張っていて古い木造平屋でしたが、中に入ると白を基調にリフォームしてあり、ピカピカの梁が突き出た吹抜け2階建構造のお店でした。

 

店内の中央には白い塗装が施された薪ストーブの中で、パチパチと薪が燃え火が躍っているのを見て「雰囲気良いな、ここの席にしてもらおう。」と、中へ通そうと奥から出てきた女性の店員さんにお願いをして、薪ストーブの前の二人掛けの席に腰掛けました。

 

私以外には1組、別のお客さんが入っていて談笑をしていてカウンター席の奥では先ほどの店員さんと他に女性の方が3人ほど笑顔を混じえながら調理のお仕事をされていました。

 

どうやら菜食系や美容に良いメニューを扱っているお店のようで、メニューを捲りながら「あれ?このお店アイスコーヒーとかないのかな?」と思いながらページを進めるとタンポポコーヒーの文字が目に入る。

 

「タンポポコーヒーとは一体…」

 

タンポポのコーヒーなのか、タンポポコーヒーという名のレギュラーコーヒーなのか。


ちょうど昼時でお腹も空いたのでセットで頼んでみようか。

 

メニューにはタンポポコーヒー以外のコーヒーはなく、難しく考えても疲れるだけなので「大豆ミートハンバーグのワンプレートセットと、飲み物はタンポポコーヒーを一つ下さい。」と取り合えず頼んでみることにしました。

 

オーダーしてからは上着をハンガーにかけ、じんわり暖かい薪ストーブの熱を感じながら渡辺和子さん著の「置かれた場所で咲きなさい」を黙々と読み進めていました。

 

事件

本を読み進めているとお店の引き戸が開き、黒いニット帽とコートにどっさり雪を積もらせ「おはようございます。」と雪を払いながら長い黒髪の女性が入ってきました。

 
私は「凄い雪の量だ、ひどく降ってきたのかな。」と窓の外を気にしながら、その女性を目で追うと奥の部屋に入って暫くして花柄のエプロンと青い三角巾をしてカウンターの奥に出てお仕事を始めています。
 
そうこうしている内に、奥から一人「お疲れさまでした」とお店の外へ。
 
暫くまた読書を続けていると背後からカチャ、カチャカチャカチャ、カチャカチャと食器が震えぶつかり合う音が近づいてきました。
 
料理が来たと思い、本を閉じ鞄の中へ。
振り返るとその刹那、ガシャッと大きな音が。
 
見上げると、宙に浮いた大豆ミートのハンバーグと茶色い液体の膜が視界に飛び込んでました。
 
あっ避けきれない。無理。
 
そう悟った私は、顔を下に向けて全身を固く硬直させ全てを受け入れました。
 
固いものが頭にぶつかり、柔らかい何かが肩にあたり液状の何かがじんわりジーンズを濡らし、ゴワンゴワンと食器やプレートの転がる音だけが響く。
 
瞼をゆっくり開くと、太ももの上に大豆のハンバーグが「やぁ」と言わんばかりに堂々と居座っていました。
 
顔をあげると奥にいたお客さんは驚いた表情でこちらを見て固まり、目の前には先ほど出勤してきた女性が両手を前に差し出し、強張った表情のまま涙目で立ち尽くしています。

後片付け

そうこうしていると奥からさらに女性が店内を走ってきて、事の次第を確認したのか

「申し訳ございませんでした!」

と慌てた様子で、他の店員の方と私の身体を二人掛かりで拭き始めました。
 
「大丈夫です、大丈夫。自分で身体は拭くので食器をお願いします。」と諭し、床に転がった食器の後片付けをお願いしました。
 
怒りは何も生まないと日頃考えているせいか、ハンバーグが降ってきても私自身怒りや負の感情は一切湧き出ませんでした。
 
むしろ店内を騒然とさせてしまったことに申し訳なさを覚えながら、手渡されたおしぼりを使い、せっせと洋服拭いていると荒い呼吸音が聞こえてきました。
 
呼吸音のする方へ目を配ると、私にワンプレートを飛ばしてしまった女性が荒い呼吸のまましゃがみ込んで動けない様子。
 
私は咄嗟に過呼吸かもしれないと思い、床の食器を片付けている店員の方に「紙袋かビニール袋をください」とお願いして周囲を見渡す。
 
他のお客さんや店員さん含め男手は私だけ。
 
動けなくなった女性に「過呼吸かもしれないから」と一言伝えてそのまま抱えあげソファに移動させたあと、袋の中でゆっくり呼吸をするようにお願いをしました。
 
直後はそんな状況もあってかなり騒然としましたが、過呼吸も治まり落ち着いた後、「ごめんなさい。」と一言謝罪されました。
 
なんだか、緊張から一気に安堵したのか急に私も可笑しくなってしまい笑いながら「大丈夫です」と一言。
 
お店の方から猛烈な謝罪の嵐にあい、色んな汁で服も汚れ早くクリーニングしないと落ちなくなってしまうので、何も食べずにその日はお店を後にすることにしました。
 
去り際、クリーニング代をお支払いしますのでとお店の方に名刺を渡されそこで初めてA型・B型支援事業所という文字を見たですよね。
 
ん?一般的な会社とは違うのかなと考えながらも、
お店の方に
 
「クリーニング代は結構ですが、来週末にまた来ます。」
 
「その時に、タンポポコーヒーを是非飲ませてください。」
 
それだけをお願いしてお店を後にしました。
 
雪が降る中、体から色んな匂いのする服を着て歩いていましたが過呼吸になった女性のことが気がかりで仕方ありませんでした。
 
驚いただろうな。
 
お店の人に怒られてるんじゃないだろうか。
 
失敗して落ち込んでいないだろうか。
 
そんなことを頭に巡らせながら、雪を踏みしめ帰宅しました。
 
その2へ続く