父親の胃がんを知らされました。
手術の同意書に記入を迫られました。
しかし、医師の話を聞いて、私は疑問に思いました。
『この状態で、4分の3を切除とは、納得がいかない』
そこで、私は父の説得に臨みました。
父親は医師の言うことに素直に従おうとしています。
私は病院の帰りに、父親を居酒屋へ誘いました。
父はお酒が大好きだったからです。
「もし、胃を切ったら、お酒は飲めないよ」
「それは困るよな」
「それに、今の状態では切る必要はないよ。少し様子を見ようよ」
私は、何とか手術を思いとどまらせたかったのです。
『酒が飲めない』
この言葉に反応したようです。
そして、手術は少し延期してもらうよう、医師に頼むことにしました。
医師は、ちょっと戸惑っていたようですが、本人と家族の意見です。
従わざる終えません。
半年後。
内視鏡検査で、細胞をとりました。
そうしたら、胃がんが消えていたのです。
あれからかなりの年月が経っていますが、父はいまだにお酒を飲んでいます。
父の友人からはいわれるようです。
「Tさんは胃がんも消しちゃうんだからな~」
病院のナースをしていたら、こういった選択はあり得なかったと思います。