鼻と喉の同日手術。
鼻にはガーゼで栓をされ、口からしか呼吸はできませんでした。
しかし、喉の手術をしているため、口から呼吸をすると手術した傷にしみるのです。
やはり、鼻の手術をしたときは、口からは呼吸ができないと困りますよね。
逆に、喉の手術をしたときは、鼻から呼吸ができないと困りますよね。
呼吸も苦しかったですが、問題はトイレです。
通常なら、術後すぐにあるいていいはずの手術でしたが、状態が悪いため、安静をいいわたされました。
そのため、トイレもベッドの上、ということになりました。
それができないようなら、管をいれておしっこを出すというのです。
当時、管を入れるのは、男性の場合、医師の役目でした。
補助するのは看護婦さんです。
しかし、実習生であった私は、看護婦さんが処置してくれるというのです。
これはたまりません。
『知り合いの看護婦さん達にケアしてもらうのはなんとしても避けねば』
なんとかベッドの上で行おうとしますが、どうしてもできませんでした。
そこで、看護婦さん達の目を盗んで、トイレまで歩いていきました。
点滴の台を引きずり、ゆっくり歩きます。
上を向くと、呼吸ができなくなるので、背中を「くの字」に曲げています。
その状態で、左右を伺います。
早く歩きたくても、歩くことができません。
あまり頭に振動が来ると、鼻が痛くてたまりませんでしたから。
ゆっくり、ゆっくり
あたりを見回し、トイレを目指します。
ようやくトイレに到着。
なんとか看護婦さんの目には止まらなかったようです。
お陰様で、トイレでは用が済みました。
『さあ、帰りましょう』
点滴の台を引きながら、トイレのドアをあけます。
体は相変わらず「くの字」です。
左右を見て、看護婦さんがいないことを確認します。
安静に、という指示を破ってのトイレ。
看護婦さんに見つかるとまずいということはわかっていました。
ですので、慎重にあたりを見回します。
私は手術後ということで、ナースステーションの近くにある個室にいました。
それも幸いしていました。
同室の方に止められるというようなことはなかったからです。
ちょっと時間はかかりましたが、なんとか病室へ戻ることができました。
ベッドへ腰掛けようとしたとき、後ろから大きな声が聞こえました。
「だめじゃないの!」\(*`∧´)/
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