トンビが鷹を生んだ。

そんな大それた話ではない。

だが、親が、子供の頃、それなりに努力したにも関わらず、為せなかったことを自分の娘が、さらりとやってのけてしまうのを見ると、嬉しくもあり、激しい驚きを覚えるのである。

実は、これまでにも、8歳娘は、何種目かで、親である僕や奥さんを越えてきた。

・のぼり棒

・平泳ぎとバタフライ

これらなどは、教えを請うた師匠が良かったのかも分からないが、本日、彼女が披歴した技には、どぎもを抜かれた。

口笛である。

風呂で、僕が頭を洗っていると浴槽に浸かっている娘が尖らした口先から高音を発している。

まごうことなき口笛である。

しかも、曲を吹いている。

ピッチが甘いが、リズムはしっかりしている。

「ミッキーマウス・マーチ」だ。

口笛は、誰に教わるワケではない、自分で習得するものだ。

僕にも奥さんにもなかった才が彼女には備わっていたということ。

感動する。

いつ練習したのか質問すると学校の帰り道だと言う。

歩きながら、学べる“口笛教室”が開かれていると言うのだが、一人で帰っているという。

どういうことか。

口笛教室の先生は、透明人間だと宣う。

そんな不可思議な虚言こそ、彼女の独特の才かも知れぬと思い、背筋が寒くなった。

冬の口笛は、寒々しい。