先日は月例の、国会版林塾「綜學勉強会」が開催されました。

 

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今月は「老子に学ぶ人物と器量」でした。本当に沁み入る、ため息の出るような講義でした。
 

 

現状の国政では正義の主張ばかりが激突しており、老子思想の必要性を痛感しました。
私個人も、定期的に読み返し、儒家的になりやすい自分を自戒しなければとしみじみ感じました。
政治に、日本に、必ずや必要な思想だと、改めて確信しました。
 

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以下、参考の要点録です。文責不問で願います。
<要点録>

「老子に学ぶ人物と器量」


中国思想を代表する二大思想…
 孔子(儒家):山の思想、男性的、道徳教育的
 老子(道家):谷の思想、女性的、宗教芸術的

たとえば犯罪者に対しても…
儒家;裁く!
道家;その人の立場がある

それぞれにリスクもある…
儒家;出たがり屋、功名心ばかり、狭量になる
道家;世捨て人、放縦、いい加減になる



バックボーン、信念は、儒家で養うべし。
懐の深さ、大きさを養うときは、道家が有効。
両方あるといい。
東洋的一流人物はみな、両者を学び取っている。


儒家のキーワード…
仁;真心
義;羊が整う=筋を通す。
礼;作法。身の処し方。心に思うところ、仁義を、形に示すこと。美しさが求められる。
智;智恵の智。工夫。仁義の世の中をつくるため。


道家のキーワード…儒家が尊ばないものを尊ぶ

無;虚無。虚無そのものが器になる。力むと無理がでる。無欲さ=公欲=大欲。山岡鉄舟は、明治天皇の侍従であるのに、立場を使わなかった。
天皇「山岡には欲が無いのか?」
山岡「いや、私には誰よりも大きな、大欲があります。しかし大き過ぎるので、無欲に見えるかもしれません」
欲があれば、人を測れる。何で釣ればいいかわかる。しかしそれが無いと、不気味。

愚;愚直といえるくらいまっすぐな熱意。
拙;本人は一生懸命だが、拙いと、周りが「俺がついてやらないと」と思ってもらえる
柔;柔弱さによって、相手の力を自分の力に変えてしまう。
合気道で「柔よく剛を制す」という。ただぶつかるだけなら力の強い方が勝つ。どうやってそこに、柔の要素で勝つか。
政局運営にも活かしてほしい。


無・愚・拙・柔の反対は、
有・賢・巧・剛。これらを突き抜けた上での無・愚・拙・柔。
老子は、片方だけを言ったのではない。


儒家と道家=表観と裏観。肩書きを見るvs本質を見る
儒家は表観を重んずる。道家は裏観を重んずる。
儒家の思想でバックボーンを確立する。道家の思想で、器量を養ってもらう。


安岡正篤先生は、陽明学者ゆえ、儒家的。
しかし中身は、実は相当、道家の思想を含んでいる。
ゆえに大きな人物が多数、教え子からあらわれたのだろう。
特に指導者として、責任が大きくなればなるほど、両者のバランスが大事になる。
 
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老子とは…?
老、という漢字…よく練れた、の意味。老酒、老師。
春秋時代末期の思想家といわれるが、無名であろうとしたため、生没年はハッキリしない。

図書館司書の役人をしていた。
そのとき、「老子道徳経」略して「老子」を、頼まれて著述。
人名、地名の固有名詞はゼロ。揚子江の「江」のみ。


孔子は、人の道。
老子は、道(タオ)といえる。

徳…
儒家では、人格者になったら。
道家では、先天の徳。産まれながらの本性、天性。


孔子が老子から教えを受けた説…
まだ若き孔子が焦っているのを、見抜かれて、叱られて追い返された。
老子という人は何人も実在していた可能性が高く、あり得る。「老子」とは、よく練られた人物という意味。何人もの弟子がいて、やがて一人が編集した可能性がある。
孫子も、二人の思想家が一つの本にまとめられた。


道家は、前に出て行く指導者にこそ、必要な思想。政治家にこそ必要。
行き詰まりを迎えた物欲文明と膨張経済の中、あり方を根本から考え直させてくれるヒントがある。
老子は世の中の逆をやった。世間がまだ気付いていないところに着目し、我々の時代へと引き寄せる。皆が見えていない未来を見る力になる。

 
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<以下数字は、資料の箇所を表す。資料画像は冒頭ブログ参照のこと>

11●有のもって 利をなすは、無のもって 用をなせばなり
無の部分があるからこそ、有が生きる。
コップは、中が窪んでいるから、用を成す。
山水画水墨画は、余白があるから、命が吹き込まれる。
いますぐそこにあるものが、実はヒントがあるのに、気付いていないのかもしれない。

22●曲なればすなわち全。
まっすぐな木材は、すぐ伐採される。
曲がっている木材だと、儒家的には役立たずだが、
縦横揃えて、どこにでも役に立つ人を揃えるのがいいことかどうか?安定している世の中ならいいが、乱世なら生きる
器の大きい人、普段はよくわからない人

22●枉(身を曲げる)なればすなわち直…
どんなときも背伸びしていると、その分しか伸びない。
身を曲げている方が、大きな飛躍がある人かもしれない。

22●窪(わ=くぼ地)なればすなわち盈
普段なら厄介なので遠ざける人でも、受け止められる
国会議員の皆さんは、優秀だと感じる。しかし老子の教える「器」をもっと学び、党派を超えて連携できるかどうか?に、日本の未来がかかっている。

8●上善は水のごとし。水はよく万物を利して争わず、衆人の悪(にく)む所におる。故に道に近し。
水は争わず、みなが嫌うところ=下に、向かう。

66●江海のよく百谷の王たるゆえんは、下るをもってなり…
指導者は国民と争わない。ゆえに国民も指導者を信じる

7●その身を後にして身先んじ、その身を外にして身存す。その私なきをもってにあらずや。故によくその私を成す
自己否定ではない。先に行かせることで、気がついたら、皆の先頭に立っている
明治政府は藩閥政治だ!という批判もあったが、あとから来るものを引き上げることに、明治の指導者は非常に熱心だった。

24●企(つまだ)つ者は立たず。跨ぐ者は行かず。自ら見(しめ)す者は明らかならず
疲れてしまうので。

9●富貴にして驕れば、おのずからその咎をのこす。功遂げて身退くは、天の道なり。
秋山好古は、陸軍で指導者となるより、中学校の校長先生となり故郷で子供達に教えていた。そういう明治の指導者は多かった。
いまの国会議員の皆さんも、子供達や若者に、経験を伝えて欲しい。

30●果たして(戦果をあげて)已むを得ず、果たして強なることなし(強大になってはいけない)。物壮なればすなわち老ゆ(必ず衰える)、これを不動という(道に外れている)。不動は早く已む(滅びてしまう)
戦争そのものは否定しないが、仕方なくやるもの。


45●大成(立派)は欠くる(不完全)がごとく(そう見える)にして、その用やぶれず
45●大盈(充実している)は、沖しき(むなしき)がごとくにして、その用きわまらず
45●大直は屈するがごとく…あるべきところにあるものがあることで、まっすぐ
45●大巧は拙なるがごとく…素晴らしい器もいいが、本当は使う人が補完するもの。万年筆を貸すな=使う人が完成させる
45●大弁は訥なるがごとし…喪主挨拶のように、涙声で話す方が、アナウンサーが流暢に話すより、胸に響く

42●道は一を生じ、一は二を生じ、二は三を生じ、三は万物を生ず。万物は陰を負いて陽を抱き、沖気もって和をなす
陰気、陽気、沖気(=むなしい、中立)
陰と陽は、同時に存在する。そしてそれをつなぐのが沖気。これが東洋の世界観。西洋の弁証法には全くない。
この老子の一文から、湯川秀樹はノーベル賞の研究「中間子理論」を思い付いた。

40●反は道の動なり。弱は道の用なり。天下万物は有より生じ、有は無より生ず

3●賢(野心家)を尚(尊)ばざれば、民をして争わざらしむ。
智慧+自己中心の人が、争いをつくる。これをどう抑えるか?が肝心
思想家が考える憲法は、情緒的になる。権力が暴走しないよう、国民を守るもの。

3●得難きの貨(新品)をたっとばざれば、民をして盗をなさざらしむ。欲すべき(欲望)をしめさざれば(刺激しない)、民の心をして乱れざらしむ
最近の若者はこうなってきている?老子のようになってきた。
時代の循環が来ている。豪華にやることばかりがいいことでもない、という考え。経営者でも、売上ばかりではなく、仲の良い社員と過ごすのが大切。
老子の思想は、実は時代の最先端かもしれない。

18●大道廃れて仁義あり。慧智出でて大偽あり。六親和せずして孝慈あり。国家混乱して忠臣あり。

57●民に利器多くして、国家ますます暗し

80●故郷ほど一番いい
老人ホームにいてボケてしまっても、生まれた所は忘れない

63●意識的に何かをしない。
一段高いところから全体を捉え、核心をつかみ、流れを読む。

81●美言は信ならず
飾っている人は信用ならない。

81●天の道は利して(プラスとなって)害せず(害がなくなる)。聖人の道はなして(おこなって)争わず(逃げろではない。争う必要なくなる)



中国の人民大会堂で、老子を講義したい。