偉人には経営者にもたくさんいます。その中の一人、出光興産の創業者、出光佐三は戦後の日本復興に大きく関与すると同時に、「社員を家族」という日本古来から伝わる商家の考えを貫き通した人物です。

終戦から二日後、佐三は社員を集めて訓辞をしました。「愚痴をやめよ。世界無比の三千年の歴史を見直せ。そして今から建設にかかれ」敗戦により海外に進出していた全ての店舗を失った中の第一声がこの言葉であり、社員は驚くとともに勇気づけられました。何千年と続き、幾多もの危機を乗り越えてきた日本の歴史を見直して、誇りと自信を持って再建をしていこうという精強な言葉は社員のみならず復興に努める日本人を励ましました。

また、終戦により千人もの復員してくる社員に対し重役は人員整理を提案しますが、佐三は従業員を家族同様に扱う「人間尊重」を信念から、「一人もクビにはしない!」と強く宣言。社員とその家族を荒波に放り出すことはできない、全員を食わしていくのだという強い信念に感動を覚えずにはいられません。

歴史と社員を重んじた佐三は会社と社員の関係、また命をかけて部下を守るリーダーというものを体現しました。自分の信念を通し、自ら危機に陥りながらも守るという美しい日本精神をいつまでも残していきたいですね。

(『いどばた稲毛』・11月号掲載)