私は、評論家であり、またシェイクスピア訳者であり、はたまた国語学者であった、福田恆存氏を、敬愛している。


毎年一度、この頃に、現代文化会議という団体が主催の、福田恆存関連の講演会がある。
私はなるべく参加している。


今年は市ヶ谷にて。
講師は阿川尚之さん。
有名な阿川弘之さんのご子息で、日米関係の専門家だ。
参加してきた。


以外メモです。


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・進歩的左翼への反発は昔から。


・父の勧めで、若い頃にアメリカに行かされた。

・16年アメリカに住んだので、日本での反米の人の感覚がわからなかった。

・パパブッシュがイラク攻撃したとき、日本論壇があまりに批判的だったので、決断までの苦悩を元に米国擁護の論を書いた。9.11でも米国の立場を書いたら、日本の論壇からいろいろ批判を受け、光栄だった(笑)


・福田恆存はアメリカ嫌いだったと思う。まず食事がまずかった。サービスも悪い。真正面から自分の権利と要求を主張する文化に辟易していた。

・ただ、怒ってるわけではないように感じる。アメリカに行ってアメリカ嫌いになる人は多いが、福田さんはそうではなかったと思う。内村鑑三、江藤淳、西部すすむ、藤原正彦なども、アメリカ嫌いになって帰ってきた。が、福田さんは少し違った。

・福田さんほど、アメリカについてこれだけ的確に、かつ同情をもって書いてる人はいない。グランドキャニオンに行ったとき、アメリカ人の生き方を知ったようだ。

・アメリカとは、圧倒的な自然に対し、人工的対抗をする国。アメリカの匂いは、消毒薬の匂い。スーパーでもどこでも同じ匂い。冷凍、殺菌のための匂い。

・福田さんは七ヶ月いたが、ずっとこの匂いが嫌いだった。しかしそのあとヨーロッパにいるとき、なんと、そのアメリカに郷愁を感じたとのこと。あの匂いが自分を押し倒してきた、とのこと。

・福田さんは言う。この匂いは、アメリカの象徴。開拓性。この国の文明は、激しい自然の脅威の中にかろうじて人間が生きている、というもの。イギリスのような箱庭ではない。コントロール不能な自然と戦っている。これはトクヴィルも同じことを言っている。アメリカの文明領域とは、自然から切り取った戦利品である。

・つまりアメリカのあの匂いとは、人間の文明の匂い、自然から守るため肌を温め合っている人々の生活の匂いであり、それが郷愁感を呼ぶのだ。アメリカ人の物質主義をバカにしてもいいが、それはただの利便や快楽のためではなく、これが生活の一部なのである。精神の爪痕がある。


・なぜ日本の保守派が反米になったか。
一つはアメリカの伝統の無さ。
または民主主義の愚かさ。
または戦争に負けたから。
またはバークレイに行って変なアメリカ人を見たから(笑)
または人種問題。…しかし自分は、アメリカ人による差別の有無は、言葉のレベルに寄ると感じる。言葉ができればアメリカ人は差別をあまりしない。

・一つの不幸は、日本占領のときのアメリカ人は、保守派でなかったこと。日本国憲法は、アメリカが本国でできなかった改革を、革新派が詰め込んだものだ。

・アメリカの保守派と日本の保守派は結構分かり合えると思う。




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私(田沼)自身と考えが同じではないところもあるが、

福田さんがアメリカの本質を的確に見ていたのは確かと思う。

壮大な実験国家であるアメリカの帰趨はまだまだ日本に大きな影響を与える。

我々としても、これからの日米関係を、戦略的に創っていかねばならない。



私は反米・親米という分類は、あまりよくわからない。

というか意味があるとあまり感じない。

いまだに大戦時の原爆投下や空襲への、恨みは、正直抜けないので、その意味では反米なのだろうが、

だがその腹をぐっと抑えつつ、お互いに利用できるところを利用し合いながら、共通の利害をみつけて動くべきだろう。

それが外交的したたかさ、というものだと考える。

もっと言えば、これからの日本は、中国とどう付き合うかが、決定的に重要だ。

私は真剣に、危機感を持っている。

アメリカと共に、いかに中国をコントロールするかに、日本の叡智を結集すべきであって、

その切実さの前には、親米反米という単純な分類やレッテル貼り闘争に、あまり意味があるとは思えないのである。



その意味で、かつて安倍総理が唱えた「価値観外交」

麻生外相・総理が唱えた「自由と繁栄の弧」は、これからの外交方針として相応しいと感じる。

そしてまた、価値観を同じくする各国との連帯を重視しつつも、

日本は軍事力としても外交的戦略性としても、もっと自立をしていくべきだろう。



来年は世界の首脳が変わる選挙が多い。

これからの数年間が非常に日本の将来にとっても重要な時期だ。

外交政策にも注視しながら、日本の活路を、見出し、

私なりにできることをやり、提案できることを提案していきたい。