とんでもない事件が起きた。



○「台湾島」地球儀 学研に苦情多数 タカラトミーも販売中止に
http://sankei.jp.msn.com/life/education/080111/edc0801111117002-n1.htm



●他人を批判・断罪するのは、基本的に傲慢なことである。しかしながら、それでも言わねばならないこと・ときがある。
せめて、我が攻撃による相手の痛みをわかりながら、主張したい。



「注文が来ていたため、仕方なく中国政府の要求を呑んだ」
相当担当者は苦悩しただろう。そして会社の都合を優先してしまった。
その気持ちはわからなくはない。顧客第一主義は立派なことだし、製品を楽しみに待っている顧客のために働くことは当然よいことだ。



しかしながら、まず、日本の国是を破り、中国政府の要求を鵜呑みにした「屈辱製品」は、本当に顧客のための製品なのだろうか?
そして、注文が来ている顧客に製品を届けるのは、往々にしてクレームが怖いだけではないだろうか?



経営は「顧客に満足してもらうため」でもあるが、同時に「自社の利益のため」でもある。それは避けられない本質、宿命だ。
ゆえに「ほんのわずかに屈辱商品になってしまってでも、顧客に製品を届けることを優先した」とも言えるが、「国是よりも自社の利益を優先した」と言われてしまっても反論できないはずである。



こういう微妙なところでこそ、倫理感ある判断、立派な態度がとれるかどうかが、問われる。

のっけから金儲け第一という会社は滅多にない。むしろ、こういう、極めて微妙なところ、迷うようなところでこそ、本当の経営理念が試されると私は考える。



他の企業、いや私たち自身においても、同様のことが今後起こりうる。
この事件を他山の石として、国是を踏まえた経営、倫理感ある経営の大切さを、再認したいものだ。



なお、学研の、以降の対処は迅速的確であったことを付け加えたい。

販売中止の判断も早く、謝罪表明や返品対応も誠意あるものと考える。汚名挽回したといえよう。




●さてもうひとつ。ひるがえって、顧客である、わたしたち一般消費者も、自戒せねばならないことがある。

冒頭書いたように、一方的な悪者はいないことを、決して忘れてはいけないということだ。



今回のケースでいうなら・・・

もし学研やトミーが誠意をもって、「注文頂きましたがお届けできません、中国政府の圧力には屈するわけにいきませんでした」と釈明してきたなら、その判断を批判してはいけない。

むしろ称賛すべきである。
「自分の注文が来ないのはおかしい、何とかしろ」などとクレームをつけたりするのは最低だ。



結局、政治が有権者に合わせてくるのと同様に、企業も消費者の行動に合せてくる。

因果応報。実は我々の振る舞いや倫理感が、社会問題を起こしていることもある。
「人の悪を責める前に、まずわが身を振り返りなさい」という教えが、古来いわれる所以である。
誰かが悪いのではない。問題の多くは、相手にも自分にも非があることの方が多いのだ。そのことを、忘れてはいけない。



政治でもなにごとでも、せめて相手の痛みを分かりながら、丁寧に誠実に改善提案をしていきたいと思う。