今朝の千葉日報で、ニューフィル千葉の記事が出ていました。

ちょうど昨日、ある有権者の方から、

「ニューフィル千葉(略称;NPOC)の演奏会に行ったら、『県から今後は自立経営をしろと申し渡され補助金も減額されつぶれそうだ』と訴えられたが、どうすべきか?」

という質問を受けており、それへの私の返答を書いたところでしたので、まずそれを引用します。

(参考に、千葉日報の記事も、一番下に引用しておきます)



(田沼文ここから)==============


NPOCの自立経営に関するご質問ですが、元コンサルタントとしましては、
まずは実態調査をし、問題の状況を整理した上で、解決策を考えていくのが通常のやり方です。
ですので以下はあくまで仮説であることをご了承ください。



やはり自立経営をするならば、一番大事なのは売上げの確保です。
特に官庁系団体の場合はその重要性が高いと、経験的におもっています。
A様が言われるとおり、大リーグの経営手法を導入するのがよいと思いますし、
近くではロッテマリーンズも相当フランチャイズに成功している事例として、
調査分析する価値があると思います。

しかし結局は、これもA様の言われるとおり、行政にぶら下がる意識では改革は進まないでしょう。
あらゆる方面から売上げを作るためには、団員全員が一丸となって、自ら売上げを作る気持ちがなければならないからです。
商売人の感覚をしっかり全員が持ち、施策に落としていくことが重要です。

たとえば、県内のオケコンサートをすべてNPOCが受注できれば、どれだけ売上げが伸びるか?です。
まだ、マーケットシェアという視点も、マーケットの規模自体の把握も、なされていないかもしれません。
県民ニーズはどんな演奏ジャンル/曲にあり、どれならNPOCは応えていけるかも、調査が必要でしょう。
県内のエリア別の、オケコンサート実施状況調査から、未開拓地への進出余地もみえてくると思います。

売上げを作るためにやるべきことは、いくらでもあると考えます。
すべてやりつくしたか? それに悔いなく答えられるよう、情熱を持って改革に取組むことが必要と思います。

突き放した言い方ですが、多くの民間企業での改革案件を通して得た私の信念は、
やはり情熱が最も重要、人が最も重要、ということです。方法論は方法論に過ぎません。
NPOCを救いたい、という人がどれだけいるか。特に内部の方が重要です。

NPOCがいま、事務局員の増員を求めているということは、完全に推測ですが、
そういった団体改革をする人材がそもそも手薄という状況があるのかとも思います。
私も音楽をやっているので想像がつくのですが、音楽家は団体運営に関心のうすい方が多く、
情熱を持って団体であるNPOCを救う!という動きになりにくいのだろうと想像します。
一人の情熱的な内部員、それは演奏員でなくても事務員でもよいのでしょうが、
そういった人材の有無・確保がポイントかと思います。

以上です。



(田沼文ここまで)==============


上記の私の意見をひとことでいうと、NPOCは県にこういうべきです。
「自立経営のために頑張るので、時間と人材をくれ」




まず自立経営についてですが、NPOCにも発足以来の歴史的経緯があるでしょうし、情報が少ないため、以下仮説ですが、

私はやはり自立経営は不可避だと思われます。

私自身も音楽をやっていますので、「音楽の町、千葉」になってもらいたい、NPOCに存続してもらいたいと、強く願っています。
しかし税金に甘えなくては存続できないのでは、本当の音楽の町ではなく、仮面の姿だと思います。



ちょうどよく言われる、「被差別部落の差別問題をなくすために最も重要なことは、被差別部落ゆえの補助金を打ち切ること」と同じ論理です。

補助金が恒常化してしまうと、自立力が失われ、逆に差別解消への道が閉ざされて現状が固定化してしまう、という論理です。



ビジネスでも、補助金漬けで存続している業界はいずれダメになります。

補助金は、あくまで「補助」のためであって、これが”一時的”でなくなり”継続的”な補助となってしまっては、

もうそれは補助とは呼べません。

当然、自立経営はできなくなります。そうしなくても、自動的に入ってくる収入があるわけですから。誰でもどうしても、自分たちだけで黒字化を達成する気持ちは失われ、甘えが忍び込みます



少なくとも民間のビジネスでは、赤字を許容するのは、投資的性格があるものに限られます。

つまり、いつかは黒字に転換できるから、いまはその巣立ちのために、赤字を許容する、という場合です。



NPOCの件でいえば、NPOCへの補助金は、県民に音楽を提供するためのコストではなく、

県民のニーズがない・あるいはニーズを掘り起こせていない、つまり県民に十分な音楽提供ができていないことを許す・温存するコストになってしまいます。

補助金前提の経営というのは、そういう本末転倒なことを認める経営です。


ゆえに、自立経営は不可避と考えます。




しかし、私は「NPOCが破綻してしまってよい」とは考えていません。むしろ逆です。

ぜひとも自立経営をしていってもらいたいと思っています。
そしてそのための努力をする、期間を与えるべきと考えています。



これも仮説ですが、私の考えでは、まず県の判断に、問題があると考えます。

NPOCの自立力が衰弱しきったのは、本当にNPOCだけの責任なのか? 補助金を与え続け、自立経営をさせてこなかった・その成長を育んでこなかった、県にも責任があるのではないか?
ゆえに、性急に自立経営を求めるのは、無理があります。徐々に経営力、それは団員の商売感覚と言ってもいいと思います、それを養うべきです。
現在の財団から組合への提案には、その決意を感じますので、今後県はこの改革を、ある程度時間をかけつつ、見守っていくべきでしょう。




むしろ私が理解できないのは、組合の下記意見です。


「団員によっては(出来高制導入によって)最大で年収が六割も減る見通しであることから、組合が反発を強めている」

ということも、団の存続を前提としているように感じます。
団が破綻すれば、6割どころか、10割減ってしまうのではないでしょうか。


財団側の、出来高制などの提示に反発するならば、代替案を出すべきです。
本当に破綻を避けたいのなら、財団に同意するか、財団以上の改革案を出すしかないと考えます。
あるいは他団体は縮小しているけれども、自分たちだけは補助金が維持してもらえるよう、県にお願いするつもりなのでしょうか。それは無理があります。
実態はわかりませんが、私には残された選択肢はあまり多くないように見えます。




以上、仮説が多いので、もし間違えていましたら修正いたします。その前提でお読みください。

しかしもし事実に近いならば、組合員の方の、NPOCへの愛着を期待します。そして破綻を避けるための努力、自立経営の努力を期待します。
私もできることがあれば、できる範囲で、応援したいと思います。





(参考;千葉日報記事)----------------------------


楽団に給与4割減要求
支援なければ15日破綻 ニューフィル千葉

http://www.chibanippo.co.jp/news/seikei/kiji.php?id=seikei06120109431901


 財団法人ニューフィルハーモニーオーケストラ千葉(理事長、堂本暁子知事)の解散危機問題で、楽団員が県側から賞与全額カット、年収40%減を提示されていることが三十日、分かった。存続のためには県の緊急支援を受ける以外ないが、県は支援の条件として、財団に自立型経営への転換を要求。財団との交渉に労働組合は反発しているが、県の支援がないと十五日にも財団は破綻(はたん)する見通し。四日の最終回答に向け、楽団員は決断を迫られている。


 同財団は、県民の文化振興のため一九八五年に発足。楽団員は十五人で、うち十四人が組合員。小中学校での音楽鑑賞教室や年五回の定期演奏会などを行ってきた。


 収入の柱である音楽鑑賞教室の公演費用は、県と実施する各市町村、実施校の三者が分割負担しているが、県が助成総額を減らしたため、教室の回数は一九九七年度の百七十三回から、今年度は八十九回に落ち込む。


 教室回数の激減で財団の昨年度収支は赤字に。十五日が支払い期日の外部演奏家の出演費を払うと、赤字額が財団の資本金を超過し、破綻するという。


 存続の危機ではあるが、「他の団体も補助を縮小しており、特別扱いできない」と県文化振興課は述べ、支援する条件として、職員給与の出来高制の導入など経営改革を求めてきた。


 県の要請を受け、財団は組合と交渉を重ねてきたが、出来高制を導入すると、団員によっては最大で年収が六割も減る見通しであることから、組合が反発を強めている。


 十一月二十一日に開かれた財団の臨時理事会で交渉経過報告を受けた県は、経営改善をあらためて財団に迫った。


 これを受け財団は、組合に(1)賞与全額カット(2)来年度の給与水準40%カット(3)出来高制と契約制の導入を来年九月までに協議―の三項目に合意するよう求めている。


 同課は、「つぶすことが前提ではない。合意が得られれば救済措置を取る」と明言。財団側も「破綻・解散を避けるにはこれしかない」と述べ、常勤事務局職員と県派遣の常務理事の給与・報酬を一割カットすることも提案し、妥協点を模索している。


 ニューフィル千葉の楽団員の昨年度平均年収は約四百七十万円で、事務局職員は平均約七百万円。事務局長は一千万円を上回っている。

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