依頼者のご指摘によると
1.電源を入れるとAMの受信はできるが離調した状態で受信
している
2.FMはノイズは出ているが放送局は受信できず
3.音量ボリュームを最大にしても音量が小さい
4.液晶表示パネルを斜めから見ると染みのようなものがあり
全体が黒っぽく見える
というものです。
状態を確認してみると、確かにご指摘の症状が確認できました。その他、LSBは何とか復調しているがUSBは音が非常に小さいこともわかりました。このモデルもケミコンからの液漏れで不具合を発生していることが多い機種ですね。
背面の様子です。単三乾電池4本で動作する仕様です。前世代のICF-7600D(S)はマイコン用にさらに単三乾電池2本を必要としましたが本機は使い勝手が良くなりました。シリアル番号は232208です。
裏蓋を外して内部を見たところです。
こちらの面にはそれほど電解液が広がっていないようです。
シャーシを本体ケースから取り出してフロント面を見ているところです。
中央に液晶パネルが付いており、周波数や時刻を表示します。正面から見るとそれほど気にならないのですが、斜め方向から見ると色ムラが見えます(液晶焼け?)。また、黒っぽい色(紫色?)になります。
これはパネルのバラツキによるものなか或いは使用環境による(例えば屋外で太陽光のもとに長時間さらしたとか)ものなのか原因はわかりませんが、ICF-SW55のパネルもこのようになっているものをたまに見かけます。
依頼人は変色していないパネルのついたドナーをお持ちだということで、ドナーをお送りいただくことになりました。
そして到着したドナーのSW7600がこれ。
さっそくマイコン基板を外してパネルを比較してみました。
正面から見るとほとんど違いはありませんが、斜め方向から見てみると。。。
写真で見るより実際はもっと大きな差が出てきています。ドナーのパネルを使うことに決定です。
メイン基板もドナーの方が痛み方が少なければこちらを直したほうが良いのではと思い、ドナーのメイン基板を見てみました。
残念ながらというかやっぱり、メイン基板はひどい状態になっていました。
下の写真はオーディオアンプIC周辺の様子ですが漏れ出た電解液でIC周辺のパタンが腐食、基板の裏側にも電解液が回り込み半田が腐食しています。やはりドナー基板は使えませんね。
というわけで、元からのメイン基板を修理して使うことになりました。
下の写真はマイコン基板とスピーカーを外したところです。
シャーシからメイン基板を取り外しました。こちらの基板もやはりケミコンからの液漏れがありますが、先ほどのドナー基板と比べると少しはましなようですね。
拡大してみるとやはり液漏れの被害は甚大です。
このあと、すべてのケミコンを取り去り、基板をクリーニングしようとしたところ、ポロリと小さな部品が落ちてしまいました。
何が落ちたのか調べたところ、FMのVCOに使われてたバリキャップであることがわかりました。
チップ抵抗やチップセラミックと比べ半田付け部分の面積が小さいため、半田が腐食してくると取れやすくなるのでしょう。
本機はFMが受信できないというご指摘でしたが、FMのVCOが発振していなかったのですね。
このあと腐った半田を除去し、漏れ出た電解液をクリーニング、新たなコンデンサをマウントして、AM, FMとも受信できるようになりました。AMで離調して受信する不具合も解決しました。ところが、SSBを復調してみるとUSBの音声が非常に小さいのは改善されていません。
色々調べて行くと、チップセラミックが怪しいことがわかりました。
回路図で示すと下の赤色で着色したコンデンサ(150pF)です。
容量が減少しているようなので、チップセラコン(2012)の上に1608のセラコンを追加しました。親亀子亀方式?
あとはパネルのバックライトです。発光能率の低いLEDを高輝度のLEDに置き換えました。
電流制限抵抗は220Ωが付いていたのですが、これでは明るすぎるのと、輝度むらが目立ってしまうので1.5kΩに変更して電流をずいぶん落としました。
こんなに電流減らして大丈夫なんかいな、って思われるかもしれませんが、こんな感じで光っております。
尚、LEDの光が金属枠に反射するようで、LEDを点灯させると上部にうっすらと線が見えます。ちょっと気になるかもしれませんが、これは何ともしがたいのでこのままとさせてください。LEDを暗くしてしまえばよいのでしょうが、それでは視認性が悪くなってしまします。
これで本機の修理は完了です。中波・短波・FMとも受信できますが本来の性能にまでは達していないかもしれません。ヘッドホンで聞くとFMはステレオになるのがいいですね。